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移動が再開しても、兵達は毎日ニニくんをどこかへつれていった。その度、おそろしいような時間が過ぎて、ニニくんがパンの欠片や干し肉などを持って帰ってくる。それらは、三人で分けて食べた。
明らかにひとり分よりも少ないし、おそらくは兵達が楽しみを持続させようと、ニニくんが死なないように与えていたのだろうが、ニニくんにはそんなことは関係ない。自分が我慢してふたりに食べさせることさえあった。
「もとはといえば、僕が癒し手になることをいやがったのがきっかけです。ふたりをまきこんでしまったのだから、それくらいはするべきだと思いました」
ニニくんが食糧を、少しずつでも持ってきてくれたので、三人は荒れ地についてもまだ、多少は元気だった。この辺りに遺棄されてから、数日粘れたくらいに。
ニニくんは俯いていたが、顔を上げた。ピアスが揺れる。
「そんなところです。僕達が、ここに居る理由は」
大変だったんですね、とか、そういう言葉はむなしい気がして、俺は頷く。それから、ニニくんの手を示した。
「その指環のことを訊いてもいいですか?」
「これは、弟にもらったんです」
ニニくんは指環を撫でる。俺が指環を気にしたことは、変に思わなかったらしく、効果などはないんですよと穏やかな調子で教えてくれた。
「捕まった時に、これだけは持っていたいと、お願いしました。そうしたら、これは効果もないし、つけていていいと」
その辺は、俺の推測があたっていたらしい。
「弟さんというのは?」
「ああ、父が同じだけで、それもおそらくあちらは知らないんです。僕も捕まってから、枢機卿にそう聴かされて。母親が我が家の使用人でした。あの子も、小さいうちは我が家に居て、よく遊んでいたんですよ」
ニニくんより歳下で、男の子……。
ニニくんは微笑む。
「僕と違い、意思のはっきりした子です。料理人になって、御山で働くんだと云っていて、そのとおりに御山で働いています。厨房にははいれていないそうですが。それに、このところは元気がなくて、それでも、僕が試験をうけると云ったら、これをおまもりに預けてくれました。入山してから直に返してほしいと云って」
俺は、首にかけている鎖をひっぱり、同期とおそろいの指環をとりだした。ニニくんが目をぱちぱちさせる。
「あの、もしかしてですけれど、それって、ルクトくんじゃないですか?」
ニニくんの口が半開きになる。俺は苦笑いした。「俺、ルクトくんと同期なんです。希望の配属先にいけなかったのも一緒で……」




