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ニニくんは苦い顔だ。
「僕にもおもう相手が……それで、結婚はできないと云ったら、これです。ミエラにまで迷惑を」
「迷惑ではありません」
ミエラさんはきっぱりと云う。険しい表情だったが、すぐに笑み崩れた。「それに、こうやって祇畏士さまのご一行が助けてくださったのです。開拓者はわたし達をお救いになったんですよ」
ニニくんとカルナさんは、救われたみたいに頷いてほーじくんを見たけれど、ほーじくんは顔をしかめている。
三人に魔力薬をひと粒ずつ分けた。三人とも顔を洗いたいそうで、タスについていてもらう。タスやエクシザについては、駆使魔法と思ってくれているようだ。
ほーじくんは顔を洗う三人の後ろ姿を睨みながら、不機嫌そうに云った。
「まお、あぶないよ」
「え? なにが?」
「……やっぱり、人間と一緒に居るのは、危ない」
低い声だ。
ほーじくんの云いたいことは、わからないでもない。俺はほーじくんのせなかを、軽く叩く。ほーじくんはもごもご、云う。
「魔を察知する能力があったら? マオのことをおかしいと思ったら? 攻撃してきたら?」
「それは、その時だね」
そうとしか云いようがない。
多分、そうなったら、俺は反撃する。もう封印されたくないし、滅却だって勿論いやだ。
当然、ほーじくんに迷惑をかける気もない。なにかあれば自分で対処する。自分の手で、排除する。
こちらの世界でやっていくには、それしかないんだろう。
三人が戻ってきた。俺はタオルを渡し、三人は恐縮してうけとる。顔を洗っても額のしるしに変化はなく、寧ろ汚れがとりのぞかれて鮮やかさが増していた。
俺とほーじくんは、サンドウィッチを食べている。三人にはまだすすめられないので、塩飴とお茶を提供した。収納空間からいろんなものが出てくるので、三人とも戸惑った様子である。
「それで」サンドウィッチを飲み込み、三個目を掴む。「罪状は、なんなんですか」
「さあ」
ニニくんは首をすくめ、お茶をすする。カルナさんとミエラさんが顔を見合わせ、ミエラさんが云う。
「わたしは、ニニさまとカルナさまをそそのかしたと……」
「ああ、そうだったね。ごめん、ミエラ」
「いえ」
「レティアニナは、反抗的な態度というのが問題になっていなかった? わたしは、ああ」カルナさんは顔をしかめ、頭を振る。「口にしたくもない罪ですの」
ニニくんもミエラさんも苦い顔になり、ニニくんがカルナさんに謝罪した。カルナさんはまったく、まきこまれた格好の荒れ地おくりのようだ。これくらいで荒れ地おくりにするなんて、どうかしてる。




