3603
だって、荒れ地おくりにされたのだ。効果のついた装備品はすべて没収されているだろう。そういうものは価値が高いからお金にできる。賠償金にあてられるに違いない。武器だって、持たせてはくれないと聴く。
収納空間があるとしても、中身はからっぽだろう。収納空間にものをいれていこうと思っても、巾着切りが居るのだから、無駄だ。
俺はランタンを置いて、収納空間からミルクがゆのお鍋をとりだし、小さなボウルみっつに少しずつよそった。お塩をちょっとだけ加え、ホットミルクでひきのばす。
二・三日荒れ地で飲まず食わず(魔法で出せるのなら、お水は飲んでいたかもしれないが、小柄な女性は咽が渇いた様子だった)なら、いきなり固形物はおなかが吃驚してしまうし、吐いたりしたらそのあとしばらく食事ができない。おかゆが安全だ。
俺が作業しているのを、ほーじくんは横目で見ている。ボウルにお匙をいれ、トレイにのせると、ほーじくんがそれを持ち上げた。「ぼくがはこぶ」
「あ……うん。ありがとう」
ほーじくんはにこりともせず、どちらかというと緊張した面持ちで、トレイを三人の傍まで持っていった。じゅうたんに置いて、どうぞとも食べてくださいとも云わず、走るみたいに戻ってくる。
俺の隣に座って抱きついてきたほーじくんを、せなかを軽く撫でて宥めながら、俺は三人へ云った。
「どうぞ、めしあがってください。あ、無理はしないでくださいね」
三人は戸惑い顔だったが、それぞれがボウルに手を伸ばし、膝に抱えるみたいにした。俺は、喉笛にかみつこうとするみたいに頭をおしつけてくるほーじくんを、ぺたぺたと撫でる。可愛いけど、どうしたんだろう。不安みたい。
ほーじくんの髪を、指でちょこちょこ梳く。ほーじくんは小さく唸って、前後に揺れている。ボウルとお匙のぶつかる、小さなかちゃかちゃという音が、断続的に響く。
物音がして、肩越しに後ろを見ると、タスが起きたところだった。タスは目をぎょろぎょろさせ、低声で云う。
「話をしたか?」
俺は無言で頭を振った。タスは頷いて、ほーじくんに毛布をかぶせ、外へ行く。ほんと、憎らしいくらいに気がまわる。
しばらくすると、ほーじくんも落ち着いたのか、唸り声は聴こえなくなる。だが、彼は俺から離れようとはしない。
三人がボウルを置いて、小さくお祈りした。空が明るくなってきていて、もう日が出ているらしいとわかる。さっきのは、会話ではなくて、早朝のお祈りだったようだ。




