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 女性がのろのろと、上体を起こした。小柄なほうだ。麦の穂みたいな色の髪から、ぱらぱらと砂が落ちる。女性の髪は長いが、きちんと手入れしているふうではなく、ぼさぼさで扱いづらそうだ。こちらの世界らしさを感じる。

 女性は腫れぼったい目で四辺を見、俺達に気付いた。タスに驚くかと思ったけれど、そんなことはなく、お水を、と掠れた声で云っている。額には、オレンジや紺、ビビットな緑、赤などで、槍のようなマークが描かれていた。色合い的に、曼荼羅に似ている。

 俺はほーじくんを見、それからタスを見る。ほーじくんがぼそりと云った。「ぼくがあげてくる」


 ゴブレットにお水を二杯、女性はほとんど息もせずにそれを飲んで長く、溜め息を吐いた。

 結局、俺も三人の傍まで来ている。ほーじくんとタスが一緒だし、心配はないだろう。

 もし攻撃されたらやり返して、ここから逃げる、と決めている。俺達がこの三人を見捨てたら、確実に生きては戻れないだろうから、遠回しな殺人だ。でもそうすれば、俺が冒瀆魔法をつかったとか、そういうことはばれない。そういう、汚い思惑がある。

 俺達にとってもあちらにとってもさいわいなことに、女性は敵対的ではなく、俺達に頭を下げた。

「ありがとうございます」

 声はまだ掠れている。顔は垢じみていて、頬骨が目立った。まつげにはめやにがこびりついているし、鼻血のあとらしいものも見えた。服も、粗末な上、血やなにかで汚れている。

「これもどうぞ」

 塩いりのべっこう飴をさしだした。女性はそれを両手で押し戴き、口へおしこむ。目が少し潤んでいるが、体に泣く程にも水分が残っていないらしい。

 塩飴の包みを数個、女性の膝に落とすように置いた。ヤラがちょこちょこやってきて、女性に燕息をかける。女性はびくっとしたが、ヤラが後退りしてはなれていったので、叫んだりすることはない。

 女性は鼻をくすんといわせ、傍らのふたりを心配げに見た。そちらはうなされている。「お水、飲めるかな」

 俺が云うと、女性は救われたような顔をした。「もし、戴けるのなら、わたしが飲ませます」


 お水にお砂糖とお塩を少しだけとかした。女性は、ゴブレットとお匙を大切そうに持って、お匙で少しずつ、仲間の唇をぬらしている。ゴブレットに半分、それをして、はずかしそうに幕屋を出ていった。すぐに戻る。

 寒いし、体重が身長の割にないように見えた。なので、ローブを数枚、着るように云って渡す。女性はありがたそうにそれを着込み、仲間の世話を続ける。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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