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どうにもくしゃくしゃした気分だ。どこでも誰でもいいからやつあたりしたいけれど、さすがにみっともないと思って、我慢している。パイとミルクティだとか、タルトとレモネード、もしくは単に、ぱきんと折りとったチョコレートのような、単純で即座に効果のあるものが必要だった。血糖値の乱高下はよくないのに。
もしくは、ミューくん達とみんなで楽しくお茶会をするとか、ほーじくんとなにもせずにじっと、ふたりで座っている、というのもいい。おそらくはそれが一番効果があるのだろう。
問題は、ミューくん達が居ないのでお茶会に招待のしようがないし、丁度いいお部屋やお庭もなくお茶会の会場が確保できないこと、ほーじくんと静かな時間を過ごすには沙漠は暑すぎるか寒すぎて、おまけに危険なので、本当の意味でのふたりきりにはなりようがないというところだった。
俺は軽く腰をかがめ、収納空間からとりだした氷をマルジャンとヤラにくわえさせた。努めて明るく云う。
「ごめん、いきなり走っちゃって。いや、俺の意思じゃないんだけどさ。変に停まったら転びそうだし、こわくて」
ふたりには通じたみたいで、こっくり頷いてくれた。ありがとう。
俺は小さく呻き、低声で云う。「足首、治療してもらえる?」
ヤラが俺の足首を治してくれた。お礼を云い、小さなさつま芋を数本渡す。俺の失敗をなかったことにしてくれたので、さつま芋数本では申し訳ないくらいだが、ヤラはそれ以上うけとろうとしない。
ここからは姿が見えないタスに、魔力を送った。ほーじくんは一体ずつ、丁寧に滅却をすませる。その動作は儀式じみていて、実際彼は時折茨の冠を触り、なにかをお祈りしているらしかった。ぼろぼろに傷付いて、武器さえ持っていない状態でも、ほーじくんは腰から茨の冠をさげていた。
何事もおろそかにせず、丁寧に滅却しているほーじくんを見ていると、祇畏士が敬愛されるのもわかる。彼らは(独善的で高圧的なところがあるとしても)、この世界をよりよくしたいのだろう。人間にとっての危険を、少しでも減らしたいのだ。その為なら、自分の命も省みない。それは、誰にでもできることではない。高度な教育と、そもそもの資質の問題だ。
ちょっとだけ、溜飲がさがったみたいな気がする。ほーじくんは、悪しき魂や魔を、絶対に自分とは相容れない悪と教わってきたのに違いはない。
それなのに、俺を封印したことを後悔していた。荒れ地でひとりになるなんてばかげた行いをしたことはゆるせないけど、自分がほーじくんの感情を揺すぶったのは、どうしても嬉しい。
俺ってやなやつだな。
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