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「タス、お願い、ちょっと西のほうを見てきて。危険ならすぐに戻って」
「なにを見ればいい」
タスは本当に賢いみたいだ。俺は自分の言葉の足りなさにうんざりする。「荒れ地おくりのひと達を運んできた馬車がないか。俺もほーじくんも、額にしるしがない。そのひと達に助けてもらえるよ」
俺がダストくんに助けてもらったことを考えれば、わかる。収穫中の一般市民であるダストくんでさえ、俺を助けてくれたのだ。
荒れ地おくりの犯罪者を運んできた馬車なら、それには警邏隊や傭兵が大勢のっている筈だ。荒れ地は危ないんだから、戦えるひとが来るのは当然だし、御山の決定で犯罪者を運ぶのだから警邏隊などの公的な立場にあるひと達が来るのも当然だ。
額にしるしのない人間がうろうろしているのを見付けたら、そういうひと達なら絶対に助けてくれるだろう。
荒れ地近くの村まで運んでもらえなくても、少しでも西へつれていってくれたら助かる。伝糸持ちの警邏隊員が居るだろうから、そういうひとがサーダくん達へ連絡してくれるかもしれない。サーダくんは伝糸をつかえる。
あれ?
飛んでいくタスを見ながらそれに気付いて、俺はほーじくんを仰いだ。
「ねえ、サーダくんから、連絡、ないの?」
俺に連絡がないのはわかる。だって、俺は行方不明になっている訳だし、ほーじくんと俺が一緒に居ることを、サーダくんは知らないだろう。そもそも、サーダくんと接触したかなあ、俺。
ほかの伝糸持ちのひと達、だからバルドさんなんかも、おそらく俺が姿を消してすぐの段階では連絡をとろうとしただろうが、今はしていないと思う。
俺が封印されてからどれくらい経っているかはわからないが、少なくとも二・三日ではない。その時間であれだけの魔物を封印できるとは考えられないもの。どう考えても無理。
一ヶ月か、二ヶ月か……年単位ではない、と思いたい。長くても、四ヶ月か五ヶ月くらい、だと考えたい。じゃなかったら、ほーじくんが云ってくれると思う。俺が、御山へ戻らないと、と云った時に、もう下山したよ、とか、そんなふうにさ。
伝糸って、魔力をつかう。自分の能力以上につかおうとすると、魔力の枯渇で気絶したり、死んでしまうこともある。だから、自分の伝糸が届く範囲の、物理的に接触したことのある人物に送るのが普通だ。バルドさんや俺が接触したことがある伝糸持ちのひと達は、荒れ地近くには居ないだろうし、居たとしても俺が伝糸の届く範囲に居るとも考えていないだろうから、俺に伝糸で連絡がないのは変じゃない。
誤字報告ありがとうございます。助かります。




