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なんだか気色が悪い。
リーニくんの話通り、「お客さん」は三人。かみなり、ふたご、されき。そして、つれてこられた俺達四人。数が少ない。差が。
「マオ」
ぶ厚いローブをぬぐと、すぐに抱き寄せられた。ぞわぞわする。「なあに」
「ほら、呑んで」
口許にゴブレットがやってきた。仕方ないので素直に口をつける。
さて。どうやって話を聴きだそう。ウロアが日に何回「質問」できるか、を知りたい。
賭場でウエイトレスに指示を出していたこいつは、かなり偉い筈。ヴァンさんも、ただの部下じゃないようなことを云っていた。こいつ経由でならウロアにも通じるかも、というのなら、質問の回数上限も知っているのじゃなかろうか。
お酒は、蒸留酒。炭酸水で割ってある。賭場のものと違って、上等だ。辛いだけじゃないし、変な匂いもしない。ウィスキーなのかな? かすかに桧みたいな香りがする。
されきは遠慮なく、俺を膝へ抱える。「おいしい?」
「……とっても」
またキスされるかも、と身構えたが、されきは俺の耳を擽るだけだった。
リーニくんとふたごは、少し離れたところでまだじゃれあっている。リーニくんは羽織っていたローブをぬいで、やわらかそうな生地のチュニックとずぼんになっている。
チュニックの上につけたベルトに、途中に釘が刺さったロザリオみたいなものがぶらさがっていた。あれは、ミューくんや、サーダくんも持っていたっけ。リーニくんは、ディファーズ系なのかな。
かみなりはされきのすぐ近くに座り、ティーくんとヴェンゼくんにお酌をさせていた。
ティーくんは目付きこそ鋭いが、てきぱきと世話をしている。
ヴェンゼくんはおろおろしていて、一回ゴブレットへワインらしいものを注いだ後は、ただ座っているだけ。結局ぬいだローブをきちんとたたみ、ティーくんの分もそうしていた。
喉笛に口付けられた。ぎくりと震える。
「お姫さま、初々しいな」
「……そう?」笑みを浮かべる。「されきさんは、てなれてる」
「ああ。きっと、今まで経験したこともないような夜にするよ」
ああはいそっすか。
……でも、なんだろ。今の、いやな感じ。なんていうのかなあ。とにかくいや。ここから逃げたい。帰りたい。
「なー」リーニくんが腕を振りまわす。「勝負しようぜ。ほら、道具もあるし」
示すほうを見る。気付いていなかったが、ニスが塗られて黒っぽい箱があった。それも、みっつ。




