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人間がサボテンを食べた、ということはないだろう。ためしにかじってみたが、あおくさくて水っぽいだけだ。タスが呆れたみたいに目をぎょろぎょろさせている。
すぐ傍においしい廃帝花があるのに、こちらに手をつける必要はない。トゥアフェーノは人間と味覚が違うだろうし、ほしい栄養がサボテンに含まれていたら、味関係なく食べるだろう。
「ねえ、サボテンになにか、特別な効果があったりする? 廃帝花よりも魔力が恢復するとか、持ってたら運がよくなるとか」
タスとほーじくんが顔を見合わせた。なんか、仲好くなってるんじゃない? あのふたり。
ふたりは揃ってこちらを見、タスが云う。
「ないと思う」
「ぼくも。もし、なにか、特別なものだったら、あにさま達が教えてくれてる、から」
そうだよな。サーダくんは俺の味方だし、ほーじくんにとても優しくて、厳しいけれど丁寧にいろいろ指導している。あとふたりのお兄さんは、どんなひとかは知らないけれど、サーダくんがあれだけの人格者なのだ。きっと、そのふたりもいいひとに違いない。
だから、ほーじくんがサボテンについて特に聴いていないのなら、別に伝えるようなこともない、なんてことない植物だ、ということだ。
そろそろ、日が一番強い時間帯だ。俺達は一旦、会話をストップし、幕屋を建てた。
休憩時間は、一時間と少し。その間、タスに還元をためしてもらった。
それでわかったのだが、タスはプラスチックを還元できない。正確には、できるのだがほんの少しずつだ。サキくんがどれだけ、還元に希有な力を発揮するか、よくわかった。サキくん、自信を持てばいいのに。
「こんなものは知らない」
タスは不機嫌に、何度も還元をつかって、プラスチックのボトルを徐々に、すりがらすみたいにしている。ほんの少しだけの還元なのに、素は多い。
「知らないものは、還元が難しい」
というが、少しずつ慣れてきたらしい。ぱっと、突然ボトルの底がぬけた。その部分が還元されたのだ。
「なんか、変な感じとか、ない?」
「……変とは?」
「素が普通と違うとか」
タスは肩をすくめ、なにもかわらない、と云った。プラスチックを還元した所為でこちらの世界に悪影響が、なんてことには、ならないですみそうだ。
下手なことをして、天罰をくらいたくない。以前、サキくんがこれに近いことをして、誰に対しても天罰らしきものはなかった。だから、安全だろうとは思っていたけれど、タスが素について、変わりはないと断言してくれたのは、心強い。




