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ヴェルツが減ったり、ほーじくんが知っている魔物が増えたのはいい傾向なんだろう。それはわかる。
でも、やっと辿りついた水場が、蟻塚みたいな魔物に占拠されていたとなると、いい加減腹がたつ。俺はいらいらした状態で、そいつらに偸利をつかった。しゅーっとしぼんで、最後はからからになって崩れてしまう。なんだ、あいつら。
ほーじくんが心配そうに俺を見ている。「マオ、気分、大丈夫?」
「うん」
俺はまだ残っている蟻塚を示した。「あれって、どういう魔物なの? タスが、近寄るなって云ってたけど」
そのタスが、上空から、残っている蟻塚を枯らした。ほーじくんは困ったみたいに云う。
「あれは、近寄ると体力も魔力も奪われる。人間の死体に、寄生してるんだよ」
うへえ。
見ていると、蟻塚っぽい魔物だったちりが、風に吹かれてさらさらと消えた。その下には、磨かれたような白骨がある。タスが舞い降りて、それらを還元した。重罪犯だろうし、そうでないとしても、こちらでは死体は還元するものだ。寧ろ、礼儀にかなっている。
水場、は、泥まじりの水たまりのようなものだった。こちらの世界のひとは、大概がお水を出せるから、お水を飲む為にここに来ることはないと思う。
水場のまわりには、サボテンとアロエを足してフェニックスで割ったような、小さな植物が生い茂っていた。葉っぱなのか茎なのか、多分葉っぱだろう、という部分にはわずかに厚みがあり、全体的に赤っぽい。しべなのか、花なのか、あざやかな赤の、羽毛みたいなものが、所々にとびだすようにくっついている。全体的な形状が、フェニックスに近いように見えた。小さいけど。
おそるおそる水たまりに近寄り、俺はその植物をじっと見た。小さな棘がある。「これ、魔物だったりしないよね」
「大丈夫だよ」ほーじくんがやわらかく云う。「これは、廃帝花」
……ああ! これが、サローちゃんがほしがってるやつか。
廃帝花は、よく見ると砂に近いところに、まるくて棘のないものがあり、多分実だなとあたりをつけた。食べられるのかなあ。
ほーじくんがのんびりと云う。
「廃帝花は、花を食べると魔力が恢復するから、少し摘んでいったほうがいいかも……」
「廃帝花なら食べられるぞ、マオ」
タスが戻ってきて、不機嫌そうに云った。「あいつら、たいして蓄えていなかった……実はうまいし、葉も癖があるが食べられるらしい。花ほどではないが魔力を補うものだ。収納できるのならしておけ」
食べられるんだあ。どんな味かなあ。楽しみ。
感想ありがとうございます。はげみになります。




