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ヴェルツ達を殺しつつ、俺達は西へ向かい続ける。少しずつ、少しずつ、気温は低くなる。最初に比べたら、相当楽になった頃、日が暮れてまた幕屋を建てた。
毛布にくるまってほーじくんにくっつき、なんでもないようなお喋りをする。封印のことを、ほーじくんは調べたそうだ。祇畏士協会に保管されている資料も、閲覧できたそう。ほーじくんは祇畏士になったし、封印をつかえるのだから、封印に関する資料を閲覧できるのは当然なのかもしれない。
そういう貴重な資料に拠ると、封印が解けた場合、封印した祇畏士の傍に魔物があらわれることが多いそうだ。
「祇畏士が亡くなってたら、還元されたところ……みたい。そんなふう、だった」
「へえ。どういう仕組みなんだろうね」
祇畏士が死んだら封印は完全になる、というのは、違うのかな。死んですぐに封印が解けないから、完全になったと思い込んでいるだけ、とか?
しかし、還元、かあ。そっか、埋葬しないもんな、こっちの世界。どんなに偉いひとでも、死後は等しく還元される。セレモニーの差だけだ。偉大な祇畏士なら、盛大なお葬式をあげる。一般市民なら、それなりのお葬式だ。でも、どちらにしたって、死体を残しておくことはしない。
封印がどういう仕組みなのか、くわしいことはまだわからない。でも、俺はほーじくんのもとに戻れた。それはよかったと、心底思う。もし、封印された地点である御山へ戻っていたら、ほーじくんが死んでしまっていた。
そんなのは耐えられない。
寒さも少し、やわらいでいる気がする。つめたい空気が肺を刺すが、鼻や指がもげそうとまでは思わない。
幕屋を解体して出発したのは、日の出前だ。ヴェルツが居たが、群れが小さい。三頭くらいだった。
かわりに、やすでさんや、でっかいさそりを発見した。ほーじくんがさそりを指さして、あれに刺されたら刺されたところが腐っちゃう、とあっさり云っていたので、震えあがった。いや俺は平気だろうけど、それに恢復魔法がある世界だからそういうのも治せるのかもしれないけど、こわいもんはこわい。
木みたいな魔物も居た。木の苗みたい、かな。俺より少し小さいくらいのサイズで、魔法をつかってくる迷惑なやつだ。ただ、冒瀆魔法ではなかった。
それから、これが一番厄介だけど、魚の骨みたいな魔物も居る。魚の骨みたいなのが、宙に浮いてふらふらしているのだ。サイズはドチザメの子どもくらい……かな。魔法はつかわないけれど、ぶつかってくるのが痛いし、やけに体力も魔力もあって倒すのに時間がかかる。
お昼前に、ようやくと、水場へ到着した。




