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俺の提案は、ほーじくんがヴェルツに対してやけに強かったな、というところからはじまっている。そこで、ヴェルツに偸利をつかっても魔力を奪うことはほとんどできない、というのを思い出した。でも、体力はそれなりだ、と。
タスは俺の提案を受け容れ、俺はみんなにあらためて説明した。ほーじくんは、俺が危険でないならばいいと云ってくれた。エクシザも異論はないらしい。マルジャン達は心配そうだったが、無理はしないと約束して、頷いてもらった。
話がまとまり、タスが舞い上がる。西方向をたしかめて戻り、タスは頷いた。「ヴェルツの群れが居る。あいつら、どれだけ倒してもわいてくるようだ」
それは午前中までは迷惑なことだったのだけれど、今はちょっと助かるなと思っている。
俺は砂が盛り上がったところを、必死にのぼっていった。たまに、ほーじくんがひっぱってくれる。情けないが、そうしてもらっても歩みは遅々としたものだ。「ありがとう」
「ううん……」
俺とほーじくんは、あまりに暑いのと、日光がつらく、それに砂まじりの風に辟易していて、目の詰まった布を顔にまきつけていた。それがあると、顔と首、頭皮がまもられていて、随分楽だ。目とそのまわりが痛いが、それはどうしようもない。
丘をなんとかのぼりきると、その向こうにヴェルツの群れが居た。「うえ」
思わず声が出る。数m下に居るそいつらは、ぱっと見ただけで二十頭近く、そして元気にはねまわっている。
俺達はなるたけ、一ヶ所にかたまった。ほーじくんが、俺がバランスを崩して転がり落ちないように、しっかりと腕を掴んでくれている。
「わたしは上に行く」
タスがそう云って、飛んだ。ヴェルツの群れの上へ行っている。と、ヴェルツが一頭倒れた。偸利をつかったみたいだ。
俺は息を整える。「じゃあ。ええと、マルジャン、ヤラ、エクシザ、ほーじくんに、体力を譲渡」
ぐっと、体が重くなり、あしがぶるぶる震えた。眩暈が起こり、それはよくならない。状態異常、ではなくて、体力の低下だから、どうしようもないのだろう。
俺はヴェルツを一頭見て、口のなかで偸利とささやいた。
ヴェルツ達ははね、タスへ攻撃しようとしている。タスは、おとりをしてくれているのだ。低いところを飛んだり、また高く舞い上がったり、ヴェルツが俺に意識を向けないようにしてくれている。
タスは俺の侮辱を覚えていて、でもそれはもう笑い話にしているらしい。戻ってきてちょっと笑い含みに云った。「魔王はずるいと聴いたから、こういう卑怯な手でいいだろう?」




