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ダストくんが、セムくんとふたりで数日かけてトゥアフェーノ狩りをしたと、手紙をくれたことがある。寒くなかったのかなあ。東に行けば行く程、環境が厳しいみたいなことが、あるんだろうか。
もしそうなら、西へ行く程、寒暖差がゆるくなる、ということだ。移動も楽になる。なら、頑張って、少しずつでも西へ向かう。
幾ら俺が物資を多く持っているからって、ずっとここには居られない。まちでもあるなら、別だけど。
「マオ、起きてる?」
ぼーっとしたような、ほーじくんの声がする。暑いので、少し離れて横たわっていた。
俺は上体を起こし、ほーじくんを見た。マルジャン達はまるまっているし、エクシザはたらいのなかでじっとしている。タスは、日陰のぎりぎりで、あぐらをかいて槍を持っている。
「なに、ほーじくん」
低声で云う。ほーじくんはのろのろと、こちらを向いた。ゆっくり、体を起こしている。
「マオ、人間が居るところに、行くつもり?」
タスみたいな云いかただ。俺はちょっと苦笑いして、頷く。
「うん。ここにずっと居たら、ひからびちゃうよ」
「それは、わかるけど、でも……」
ほーじくんは、歯切れが悪い。俯いて、砂をぎゅっと握りしめる。
「ほーじくん?」
「……マオ、滅却されちゃうかも、しれないよ」
俺はちょっと、停まる。それから云う。
「そうだね」
「そんな……こわくないの」
「うーん。どうだろう」
滅却される、という危険は、たしかにないではない。封印もな。
ただ、俺は、ほーじくんに封印されるまで、二年近く、うまいこと祇畏士の目から逃れていたのだ。だから、なんとなく大丈夫だろうとも思っている。油断だと云えば油断だが。
俺は軽く肩をすくめた。
「こわいけど、ほーじくんをこんな環境に置いておけないよ。それに、ほーじくんは御山へ戻らなくちゃでしょ。なら、俺は、ほーじくんをちゃんと送り届けなくちゃ」
「ひとりで平気」
「だめ」
言下に否定する。ほーじくんは眉根を寄せる。俺はちょっと、言葉を強める。
「ほーじくん、ヴェルツの群れにやられたの、忘れた? 今は俺が使役してて、体力はともかく魔力は万全だから、なんとかなってるんだよ。魔力薬だって持ってないでしょう」
ほーじくんが困った顔になった。持っていないのだ。大体、彼は杖さえ持っていなかった。野営地からとびだした時も、持っていなかったのか、それとも途中で落としたのか、はたまたヴェルツ達との戦闘で失ったのか、それは知らないが、ほーじくんは着ているもの以外はなにも持たない状態だった。




