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木陰や岩陰もないので、休憩もそんなにゆったりしたものではない。起伏のある砂が延々続いていて、気が滅入る。
偵察に飛んで行っていたタスが、戻ってきた。「ヴェルツの群れが、こちらへ向かってきている」
うげー。
砂の丘のようなところの向こうから、ヴェルツがやってきているそうだ。一直線にこちらへ向かっていて、避けようはない。
荒れ地がこわいのは、一度魔物に目をつけられたら逃走が困難なところだと思う。だって、起伏はあるけど遮蔽物がほぼゼロだから、逃げてもずっと目視されているのだ。こちらのあしが遅く、相手がしつこかったら、逃げることはできない。
つまり、俺が居るので逃げられない。
俺は氷を口に含み、もごもごと云う。「魔力は心配しないで。まだ魔力薬がある。悪いけど、まもってもらえるかな」
エクシザが途端に元気になった。こいつ、戦闘好きだよな。それとも、おなかがすいてるのかなあ。
ヴェルツ達は全部で十頭くらい居たが、即座に片がついた。丘を越えてやってきたのを、ほーじくんが清絶で足止めしたのだ。足止め、よりももっと上かな。ヴェルツ達は全部がごろんと倒れ、苦しそうな感じだった。
虫の息のヴェルツ達を、俺が偸利で仕留めた。俺の体力と魔力の恢復になって、よかったのかもしれない。くつのなかで皮がむけていた足が復活した。
エクシザはヴェルツの死体をついばんだが、すべてを食べる時間はない。なので、二頭を残してタスが還元した。エクシザは超特急で一頭やっつけ、もう一頭は半分食べて、残りをくちばしにくわえて歩く。うーん、絵面がこわい。
「ほーじくん、ありがとうね」
エクシザから意識をひっぺがし、ほーじくんへ笑みを向けた。エクシザが役に立つのは事実だし、おなかがすいているのなら食べるのは仕方ない。
俺の隣を歩いているほーじくんは、こくっと小さく頷いた。
「マオを、今度は、ちゃんとまもる。裏切らないよ」
その言葉で、ほーじくんのなかでは俺の封印が大きな裏切りということになっているのだと、理解できた。そこまで気に病まなくても、とまた思うのだけれど、それはほーじくんの心の問題で、俺にはこれ以上どうしようもない。
もともと、俺が悪しき魂であることを隠していたのがよくないんだ。ほーじくんに非はない。でもそう云っても、ほーじくんは納得してくれなかったから、これからほーじくんと一緒に居て、段々と気持ちが解れていくようにするくらいしか、俺にはできない。それを、きちんとやる。
ほーじくんの為じゃなくて自分の為に。俺が、負い目じゃなく、ほーじくんに好きでいてもらいたいから。




