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そのあと、ほーじくんはちょっと眠った、らしい。だから、もしかしたら野営地を出たのは一昨日よりも前かも、とも云っている。でも、この辺りでそんなに長い時間寝ていたら、魔物に襲われるだろうし、やっぱり野営地を出たのは一昨日だろう。
昨日の明け方に目を覚まして、うろうろして、魔物……ヴェルツの群れに見付かった。で、戦闘になって、逃げても追いかけられて、逃げた先で単独行動するという巨大ヴェルツにも見付かった。なんとか戦っていたけれど気を失って、もうろうとしていると俺があらわれた。そういうこと、らしい。
そのあと、ほーじくんの記憶は途切れ、次に目が覚めたら俺が倒れていて、マルジャン達が収納空間から椅子やベッドをとりだそうとしていたそうだ。そのあとタスが、俺がほーじくんを助けようとして倒れたこと、自分達はマオに害意はないこと、などを説明し、幕屋を建設した。
「みんなを見て、驚いたでしょう?」
「少し」
ほーじくんはちょっと、苦笑いだ。「でも、レットゥーフェルは、冒瀆魔法をつかうから……マオと仲好くなったのかもしれないって思った」
俺も苦笑いになる。そうか、冒瀆魔法同士、悪しき者同士、だな。そう思われてもおかしくない。実際は、殺し合いの末の和解だけど、そうか、そう見えるのか。
ほーじくんは、オーツ麦のクラッカーをさくさく嚙んでいる。
「これ、おいしい。マオがつくったものだから、かなあ」
そんな、可愛いことを云う。可愛くて、ほーじくんの頬っぺたをむにむにする。ほーじくんはきょとんとしている。
はばたきの音がして、エクシザとタスが戻ってきた。俺はにやにやしたままそれを振り返る。これからここを片付けて、移動するのだ。気をひきしめなくちゃ。
「タス、装備品足りる? 俺、ちょっとなら持ってるよ」
「槍を片方預かってくれ」
タスは幕屋の隅にある槍を示した。「くつが心許ない。頑丈なものはあるか?」
そこから三十分くらい、準備の時間だ。俺とほーじくんはローブを麻のものにかえた。日が出てきたら、気温が極端に上昇してきたのだ。
夜に移動するという案も出たけれど、夜に活発になる魔物もいて危険が大きいし、もの凄い寒さのなかで動くのは容易ではない。だから、日中移動が採用された。といっても、本当に暑い時間帯と、本当に寒い時間帯は、どちらも休息時間にする。
タスにもあたらしい服や胸当てを渡し、くつも頑丈なブーツを数足出して、選んでもらった。エクシザとチャタラ達は体になにかつけるというのはいやみたいで、俺達がああでもないこうでもないと云っている間に幕屋を解体してくれる。
感想ありがとうございます。はげみになります。




