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「わがままなら俺もそうだよ」
ほーじくんの腕を、軽く揺らす。どうしてこんな、子どもみたいなことしてるんだろう。
「俺も、ほーじくんに会いたいなって思ってたし、ほーじくんのことばっかり心配で、ミューくん達を忘れちゃってる時、あった」
「ほんと?」
「ほんと。つめたくて、薄情で、自分のことばっかりの、わがままなんだ俺」
「そんなことないよ」
ほーじくんはうわずった声で云い、俺の手を掴んだ。
「悪いことしたぼくを、心配してくれて、マオはとっても優しい」
「ほーじくんは悪くない」
恨みっぽくなってしまって、自分で自分がいやになる。「悪いのはさ、悪しき魂は殺せとか、封印しろとか、そういうのが常識になってる世界だよ。ほーじくんはお父さんお母さんからそういうふうに教わって、おにいさん達も魔を滅却してて、だから仕方ない。魔を封印しよう、滅却しようと思うのは、ほーじくんはそう思って当然なんだから」
怒っているみたいな声になった。本当に、呆れるくらいに俺は自己中だ。自分が悪しき魂で魔王なのは、悪くない。そう云っているに等しい。
でもほーじくんは、俺が云ったことで勇気付けられたのか、ちょっとだけ表情がやわらかくなる。
「マオ……やっぱり凄く、優しいね」
「そんなことないってば。俺は自分ばっかりの、わがまま」話していたらいらいらしてきた。俺は鋭く云う。「でもわがままでもいいって決めた。ほーじくんと一緒に居たいから、わがまま云うよ俺」
ほーじくんは面喰らったみたいで、口を半開きにして、でも閉じた。俺は口を尖らす。ぼくも一緒に居たいよ、くらい、云ってくれたっていいのに。
ほら、わがままだ。
「もう死のうと思わないでね」
「マオ?」
「ほーじくんは、俺のだから」
ほーじくんの腕をぎゅっとする。「勝手に死んだり、傷付いたりしたら、怒るよ」
「……うん。わかった。マオの云うこと、きく」
ほーじくんはそう云って微笑み、すっと顔を近寄せてきた。
頬に口付けられる。
それで溜飲が下がった。俺はにっこりして、ほーじくんの頬をつまんだ。
ほーじくんは、一昨日野営地を出て、疲れて墜落するまで飛んだ。その間、地形や水場などがどうなっているかは、まったく見ていない。
とにかく東へ行けば、だから荒れ地の深い地域へ行けば、そのぶん危険な魔物、強い魔物が居ると思った、そうだ。その段階では、死ぬつもりだったのだろう。
いや、それがはっきりしていなくても、とにかく行動せずには居られなかった。そういう感じだ。




