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ほーじくんの腕を優しく叩く。ほーじくんは目許を乱暴に拭い、マグを置いた。タスが立ち上がり、外へ向かう。「マオ、西方向の魔物を蹴散らしておいたほうがいいと思う。行ってくる。ホートリット、お前はもう少し食事したいだろう。来い」
エクシザがけっと返事して、どすどすついていった。マルジャンとヤラは、さつま芋をくわえたまま、出入り口辺りへ向かい、そこで座る。タスがふたりをねぎらった。
「お前達は頼りになるな。きちんと見張っておいてくれ、チャタラ」
マルジャン達は微笑みのような顔で頷く。タスとエクシザは、どこかへ羽ばたいていった。
タスは、俺とほーじくんをふたりきりにしてくれたみたいだ。あいつ、変に気がまわる。嬉しいんだけどちょっと腹がたつのはなんだろう。
俺は、お菓子用の小さな籐かごをとりだして、オーツ麦やライ麦、たか黍など、雑穀でつくった、ざくざくしたクラッカーをもりつけた。「どうぞ」
「ありがとう」
ほーじくんはオーツ麦のクラッカーをとって、かじる。俺もそうした。ざくざくおいしい。甘いのもいいけど、甘さ控えめなのもいいよな。
「ぼく、いろんなところで、いろんな魔物を封印した。書架は、どんな魔物でも、同じだけ埋まるから」
頷く。成程、頭数でカウントされている、ということか。質量じゃない。
「ニーバグとか、いもりとか、そういうのも……でも、少しずつしか埋まらない。ぼく、それで、思い出した。ユラが云ってたこと。リッターが云ってたこと。祇畏士が死んだら、封印が解けるかもしれないってこと」
ほーじくんの腕を掴んだ。きつく。
「マオ?」
「死のうとしたの?」
「……わからない」
ほーじくんは俺を見て、困ったみたいに小首を傾げる。本当にわからないみたいで、声には戸惑いのようなものがにじんでいた。
「ぼく、そこまで、考えてるつもりだった。でも、兄さま達の野営地からぬけだして、どんどん東へ向かって、疲れて砂に落ちて、ちょっと眠って……そこに、あの跳ねる奴らが来て、戦って、封印しようとしたけどうまくいかなくて、逃げて、……よくわからなかった。死ぬつもりなら、ぼくは逃げなくてもよかった。でしょう?」
頷く。そうだね、と云う。俺の同意にほーじくんはほっとした様子を見せる。自分の気持ちが、本当にわからない。そういう感じがする。
「必死で、よく覚えてない。でも、多分いちばん考えてたのは、マオに会いたいってこと。マオにあって、謝りたいってこと。そこには、ミュー達は出てこない。ぼくは、わがままだから、マオのことばかり考えてた」




