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ほーじくんは、からのマグを、両手で握りしめる。俺はあたらしいマグを出して、ハーブティを注ぎ、ほーじくんの前へ置いた。「俺をとりもどす、っていうのは、どういうこと?」
「うん……ぼくの封印は、解除、できない。ぼくでは」
頷く。ほーじくんの云いたいことは、わかった。
ユラちゃんのお手伝いで、封印や悪しき魂について、調べていた。資料の下読みもした。その時読んだ、封印を実際に目にしたひとの手記では、祇畏士が封印の練習をして、魔物を封印したり解除したりしている、というくだりがあった。
ほーじくんは俺を封印したことを後悔していた、でも、実際のところ、俺はもとの世界で数日すごしている。
封印解除までのカウンタは、妙な動きをしたけれど、多分突然消えたりはしていない。偸利でレットゥーフェル達を殺したから、そのぶん俺の魔力は恢復していた。確認できていないからなんとも云えないが、レットゥーフェル達を偸利で殺して、だからそのぶん魔力が増えていたことと、最後に魔力薬を服んで魔力が恢復したこと、それが封印解除の直接のきっかけじゃないのかな。
だからその間、ほーじくんは封印に対して手も足も出なかった、ということだ。要するに、ほーじくんの封印は、「封印したら自分でも好きに解除できない」ものなのだ。
封印したらしっぱなし、というのは、寧ろそれが普通だと思っていた。だから、封印がひょんなことで解けてしまい、大きな騒動になる。ひょんなこと、には、祇畏士の死も含まれる。少なくとも、ほーじくんが死なずにいることを、俺は開拓者に感謝しなくちゃならない。
封印でも個人によって、差がある。ほーじくんが俺に訴えているのは、自分の封印がどういうタイプか、ということだ。
封印し、解除も自由自在のタイプ。
ほーじくんのように、封印できても解除は好きにできないタイプ。
もしかしたら、封印後、解除までにどれだけの時間がかかるかわかるひとだって、居るかもしれない。
ほーじくんはからのマグを置き、ハーブティの注がれたマグをとる。俺はからのマグを収納する。
「ぼくは、魔力、優」
「うん」
それも、知っている。ほーじくんは、優秀な子なのだ。
「封印には、魔力が必要で……やると、疲れる。けど、凄く疲れるってことじゃ、ない」
頷いた。強大な魔を封印する、のだ。リソースなしでできるとは思っていない。なにかしら消耗はするだろう。
「それに、自分のなかに、……書架みたいなものがあって、それが少し埋まる、感じがする」
「ああ……」




