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凶悪犯が荒れ地に送られる理由がわかった気がする。冒瀆魔法をつかえるような人間はなかなか居ないし、そういうひとは滅却されるのだ。だから、正しき「死刑」である。
で、冒瀆魔法をつかえない人間は、荒れ地に送られる。冒瀆魔法をつかう魔物の居る、人間には厳しい環境の荒れ地へ。
俺はほーじくんの頭を撫でる。脚が痺れてきたけど、これはしあわせな痺れだ。絶対に起こさない。
「ほーじくんは、恩寵魔法をつかえる。元気になれば、戦ってくれると思う」
「それは、頼もしいな」
タスはそう云って、ルバを二個、そのまま口へいれた。
「魔王。そのまま、人間のところへ行くのか」
「そのつもりだけど、タス、魔王は辞めてって」
タスは口を噤む。主、というのも、据わりが悪いらしい。俺も据わりが悪いので、あれは辞めてほしい。
「タスの云うとおり、多分俺、人間の居るところへ行くからさ。その時に、魔王って呼ばれたら、今度こそ滅却されちゃうよ」
呆れ顔をされた。多分。
「わたしを、人間のまちへつれていくのか」
「え、だって……駆使魔法なら、不思議じゃないんじゃないの」
唸り声が返ってくる。変なのかな。
タスはしばらく考えているようだったが、云った。
「わたしは人間のまちには這入らないほうがいいように思う」
「だとしても、ほら、ここから人間の住んでる場所へ行くまで、長いだろうし、その間はタスやエクシザにまもってもらいたいんだけど」
「それと、お前を魔王と呼ぶのに、どんなかかわりがある」
「途中で人間に会わない保証はない」
タスはもう一度唸った。
水場はあるし、もしかしたら、収穫に出て仲間とはぐれ、そこで命をつないでいる人間が居るかもしれない。もしかしたら、なにか理由があって荒れ地に来ていて、遭難してしまったひとが居るかもしれない。もしかしたら、荒れ地おくりになったひと達のなかにも、殺人や強盗などではなく、神聖公やシアイル皇帝への不敬が処罰の理由になっているひとが居て、そういうひとを俺が気まぐれで助けようとするかもしれない。
なので、タスには「魔王」と呼んでほしくない。
タスも、俺の云いたいことはわかったのだろう。渡したくだものを全部食べて、口をもぞもぞさせている。
「わかった。マオと呼ぶ」
「うん。ありがとう」
「いや」
「あ、そうだ」
「まだなにか?」
いやそうなタスに、云った。
「マルジャン達にはもう云ったんだけど、俺に使役されてるのって、あんまり有利でもないだろうし、いやだったら解除してあげるよ。まあ、今は居てもらいたいけど……」




