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「タス、気付かなかったのかな」
「レットゥーフェルは、荒れ地の魔物じゃないから……ぼくは、昔から何度も、あにさまの行についてきてる。水場さがしは、慣れてる」
ちょっと困ったみたいな顔でそう説明するのが、可愛い。俺はほーじくんの頭を撫でて、座らせ、あらためてサンドウィッチとざくろジュースを渡した。さっき渡したざくろジュースは、砂がはいってしまっていたので、捨てている。サンドウィッチも、あたらしいものだ。
ほーじくんは、今度はサンドウィッチをまともに食べた。俺はにこにこして、隣でそれを見ている。「水場は、どの辺り?」
「ここから、日の入りの方向に、かなり行ったところ……マオ、これ、おいしい」
こっくり頷く。ほーじくんも、同じように頷いた。可愛いなあ、ほーじくん。鳥さんみたい。俺のこと好きって云ってたし、封印を後悔してるなんて、可哀相だけどなんか嬉しい。
にまにましている俺に、ほーじくんは小首を傾げる。
「マオ、どうしたの」
「え? ほーじくんが俺のこと好きって云ってくれて、嬉しいんだよ」
ほーじくんはぱっと赤くなって、もごもごとなにか云う。聴きとれなかったので、もう一度、と催促した。ほーじくんは今度はしっかり、ずっとずっとすきだよ、と云う。可愛い。
「邪魔か?」
タスがついーっと滑空しておりてくるや、そう云った。俺は低声で云う。
「静かにね」
タスは頷く。ぎょろっとした目が、俺の膝枕で寝るほーじくんを見ている。ほーじくんはご飯のあと、欠伸がとまらなくなってしまった。それで、体力快復の為には寝るのがいいだろうと俺が判断して、寝かせた。ああ、ちゃんと、自然に。愁夢はつかってない。
エクシザがどてどて歩いてきて、マルジャンとヤラを蹴るような仕種をした。チャタラ達はぴょいととびのいて、日陰にはいる。今度はエクシザが見張りをするらしい。
タスは俺の手が届くくらいの距離にあぐらをかく。「魔王」
「マオでいいってば」
「……主」
ありゃ。まあ、タスがそれがいいなら、強要はできないけど、なんか据わりが悪いな。
タスは俺のしかめ面に気付いていないのか、気付いていないふりなのか、云う。
「人間は見付からなかった。だが、痕跡はある。それも、あたらしいものだ」
「痕跡?」
「排泄のあと」
成程。それは、還元でもつかえなくちゃ隠せない。
人間のものかどうかわかるのかは疑問だったが、還元できるかどうかや、匂いで判断しているらしい。魔物とは食性が違うから、排泄物もかなりかわるのだろう。
感想ありがとうございます。はげみになります。




