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ほーじくんはひくっとしゃくりあげ、目許をごしごしこすった。俺には、ほーじくんこそ傷付いているように見える。
「ほーじくん? どうしたの……?」
「マオはぼくのこと、きらいなんだ。だから叱ってくれない」
ほーじくんの膝の上から、サンドウィッチが転がり落ちた。ほーじくんは両手で目許をこすり、しゃくりあげている。本格的に泣きはじめてしまった。
俺はどうしようもなくて、ほーじくんの隣に移り、せなかを撫でた。サンドウィッチは拾って、収納しておく。「ほーじくん、泣かないでよ」
「だって……だって……マオ……」
「ほーじくんのこと、きらいになってなんかないよ。大体、きらいになる理由なんてないし」
ほーじくんはやるべきことをしただけで、だから……あ。
もしかして、もしかしたら、妹の云ってたことが正解?
俺は哀しいのと同時に嬉しさがあって、つい、にやにやしてしまう。ほーじくんがしゃくりあげながら、ちらっと俺を見て、すっと姿勢を正した。きょとんとしている。
「マオ?」
「ほーじくん、俺のこと好き?」
「すき」
ほーじくんは大きな声で云ってから、ひっと息をのむ。顔がみるみる、赤くなった。俺はにやにやがとまらない。
「俺が悪しき魂だってわかっても? 魔王でも?」
「う……うん。す、すきだよ」
「ほんとに?」
「ほんと」
「じゃあ、ゆるしてあげる」
とびつく。ほーじくんはひゃっと云って、後ろに倒れてしまった。可愛い。
そっか、そうかあ、妹の推理があたってたんだ。ほーじくん、俺のことそんなに好きなんだ。大好きなんだ。だから、俺を封印したの、後悔してた。
ほーじくんをぎゅっと抱きしめる。ほーじくんはかたまっている。体温が高い。「俺も好きだよ」
「うぇ、あの、まお」
「もっかい云って」
「あの、あの、あの」
「云ってってば」
ほーじくんは唸って、俺の腕を乱暴に解くと、這うようにして日陰から出ていった。すっと立って、はばたいていく。逃げられた。
十分くらいして、ほーじくんは戻ってきた。日差しにあたった所為か、汗がひどい。タオルをあげた。「ごめんマオ、あの、ちょっと……頭をひやしたくて……」
「頭、もっと熱くなったんじゃないの?」
ほーじくんは泣く前みたいな顔で、こっくり頷いた。可愛い。
ほーじくんは、その辺を飛んできたらしい。タスの云うことは事実らしく、かなり高いところまで飛んでいっても、村も町も影も形もなかったそうだ。ただ、ちょっと離れたところに、水場があるかもしれない、とのこと。




