3552
ほーじくんは、だいぶ体調がよくなったといえ、まだ腕の動きなどにぎこちないところがある。だから、お風呂を手伝ってあげたかったのだ。
それなのに排除され、俺はちょっとすねていた。綺麗に体を洗い、俺の用意した服を着たほーじくんが戻ってきても、口を尖らせている。タスが衝立の向こうから云う。「わたしも湯浴みをしたい。魔王、せっけんをくれ」
レットゥーフェル、せっけんつかうんだ。
それで驚いて、不機嫌はどこかへ行ってしまった。俺は半笑いで、固形せっけんを衝立の向こうへ投げる。
「足りなかったら云って」
「ああ。チャタラ達も洗ったほうがいいか?」
「うん、ありがとう」
タスは鼻を鳴らし、マルジャンにお湯を要求していた。
ほーじくんがおずおずと、俺の側に来て、斜め前辺りに腰を下ろす。髪も羽も乾いていた。マルジャンかヤラが乾かしてくれたのだろう。
俺は収納空間から、キャンデリラワックスとマカデミアナッツオイルからできたバームをとりだした。おしゃれな木製容器にはいっている、高級品だ。妹が手配したもののなかにあった。
「これ、つかえないかな、羽に」
「あ……ありがと……」
ほーじくんは容器をうけとって、スクリュウ式の蓋を苦労して外す。鉤爪みたいな鋭い爪の指で中身を掬い、検分していた。お眼鏡にかなったみたいで、掌に伸ばし、羽にちょこちょことつけている。
「大変だね、お手入れ」
「ん……まあまあ」
ほーじくんは自然に微笑み、俺も微笑んだ。けれど、ほーじくんの微笑みはすぐに消えてしまう。
ほーじくんは俯きがちに、羽のお手入れを続ける。俺はタスが着ることのできそうなものを一式揃え、衝立の向こうへ行く。タスは顔の右側を見られたくないみたいで、かぶとは外していなかった。「きがえ、どうぞ」
「ありがとう」
頷いて、もとの場所へ戻った。ほーじくんは項垂れている。
お握りやサンドウィッチなど、片手ですぐに食べられるものもとりだして、膝に抱えた。ちらっと見ると、エクシザは砂浴びを終えて、魔物をついばんでいる。あの、複数であらわれた、跳ねるやつだ。おいしいのかなあ。まずそうなんだけど。
「魔王」
タスが衝立の向こうから出てきた。きちんと服を着て、羽はつやつやしている。俺は別のバームをとりだす。「要る? 脂」
「必要ない。わたしとホートリットは、少しこの辺りを見てくる」
エクシザがタスを見て、抗議らしい声をたてた。目付きも鋭い。タスがそちらを見、エクシザはかちかちとくちばしを鳴らす。
誤字報告ありがとうございます。たすかります。
感想ありがとうございます。はげみになります。




