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「マオ」
困ったみたいに云うほーじくんに、しがみついた。ほーじくんはお日さまみたいな、穀物みたいな、やわらかい匂いがする。
ほーじくんは黙って、俺をぎゅっとしてくれた。腕をまわすと、ほーじくんの上半身は以前よりも細くて、骨がわかるくらいに痩せてしまっていて、たまらなく腹がたつ。どうしてこんなことになってるの? どうして? ほーじくんは、しあわせに、健康にすごしてるんだと思ってた。みんなと一緒に、仲好く。
荒れ地にひとりで居るなんて、そんなのおかしい。ほーじくんには友達が沢山居るのに。
「マオ、ごめんなさい。ぼく、マオのこと……」
「あやまらないでよ」
いやな声が出た。ひがむような、怒っている声だ。怒っているから、どうしようもないのだけれど、それはほーじくんに対する怒りじゃないのに。
「俺、ほーじくんには、怒ってない」
「マオ」
「ほーじくんがこんなに痩せてて、こんな危ないところにひとりで居るのに、怒ってるんだよ。なにしてるの? 行なら、どうして、サーダくんや、癒し手さんや還元士さんと一緒じゃないの」
恨みをぶつけるみたいに強く云ってしまって、悔やんだ。でも、口から出た言葉はもうとりけせない。傷付いた、弱った、萎縮した様子のほーじくんを、尚更萎縮させてしまうかもしれない。
ほーじくんは俺のせなかを、ゆっくりと撫でている。たまに、爪がひっかかって、さりさりと音を立てる。
「ごめん」
ぱっと、離れた。手の甲で涙を拭う。ほーじくんは両手をおろし、不安そうに俺を見ている。
「ごめんね、みっともないよね、こんなに泣いて」
「ううん……」
「きがえよ」
洟をすすりながら、収納空間を開いた。「ほーじくんの着られるような服もあると思う。こんな格好してたら、不潔だし、体によくないよ」
俺は、自分とレットゥーフェルの血でまみれた服をまだ着ていたし、ほーじくんはほーじくんで、やっぱり血のついた服を着ている。血は病気のもとだ。血管のなかにある分には心配ないけれど、服についたり皮膚についたりしていたら汚い。
上着を脱いで、シャツも脱いだ。上半身裸になった俺から、ほーじくんは目を逸らす。俺は汚れてかぎ裂きや穴だらけの服を、収納空間にぽいっした。「ほーじくんも」
「え」
「綺麗にしたほうがいいよね。お湯あるし、たらいも持ってるから、体洗おうよ」
ほーじくんは座ったまま、じりじり後退る。「あの、マオ……」
「ちゃんと綺麗にしないと、俺怒るよ」
脅すと、ほーじくんは呻いて、両手で顔を覆った。




