3547
酸素が四肢にまで行き渡ったような感覚がした。四肢の先がむずむずする。
俺はタスにありがとうと云い、ほーじくんの手を必死で砂から掘り出す。マルジャンとヤラが心配そうにしゅしゅしゅっと鳴いた。タスが立ち上がる。「まだ居るのか。ホートリット、あれを追い払うぞ」
エクシザの高い声が応じた。
まだなにか居るのだろうか。
でも今は、そんなのはどうでもいいんだ。
「ほーじくん、ごめんね。でも、これでどうにかなる筈だから、あとで怒っていいから……使役」
失くした鍵を見付けたみたいな感じがした。
ヤラを見る。「ヤラ、お願い」
それでヤラにはわかったらしい。しゅっと、警戒音をたてている。俺はごめんと云って頭を振った。ヤラには無理ばかり云っている。
「ほーじくんに体力を譲渡。ほーじくんの怪我とか、不調を、半分もらう」
全部、というのは避けた。共倒れなんていやだ。
俺達は一緒に助かるんだ。
半分でも、相当な負担だったみたいで、俺は咳込んで上体をまるめる。苦しい。体のなかで剣山がはねまわっているみたいに痛い。ヤラが治療してくれているのがわかる。徐々に徐々に、痛みがゆるむ。
俺は咳込んで血を吐きながら、魔力薬を口いっぱいに含んだ。無理矢理にのみこんで、使役しているいきものすべてに魔力を譲る。ヤラが俺とほーじくんに、恢復魔法をかけつづけている。俺は体のつらさだけでなく、魔力薬のまずさにむせる。
まだ魔力薬はある。
「ほーじくんの不調を、半分もらう……」
もう一度云うと、またつらさが襲った。それでもほーじくんの手ははなさない。絶対にはなさない。
多分……ほーじくんは血を失いすぎているのだ。だから、癒しの魔法ではきかなかった。だから、俺がほーじくんを使役して、体力を譲渡するという手段が有効だと、タスにはすぐにわかった。タスに感謝しなくちゃ。勿論、治療にあたってくれているヤラと、なんとか魔法以外の方法をさがそうとしてくれていたマルジャンと、文句も云わずに戦ってくれているエクシザにも。
収納空間を開いて、魔力薬の袋をとりだす。袋を口にあてがい、ざらざらと中身を流しこむ。まずかろうがなんだろうが、生きる為ならなんだってやる。
ほーじくんを生かす為ならなんだってする。
ほーじくんが呻いた。俺はほーじくんの手を握ったまま、その場に横たわる。
限界だった。息が苦しくて、日差しがつらくて、体が動かない。マルジャンとヤラが盛んに鳴いている。「魔王」タスの声がする。だから、マオでいいって云うのに。




