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振り返る。ほーじくんを庇いながら、振り返る。
なんだろう。なんといったらいいのかわからないものがそこには居た。
魔物……だろう。赤いのは、俺のせなかを攻撃したからだな。めちゃくちゃ痛いし、現在進行形で意識が遠くなっていっている。ほーじくんをまもらなくちゃ。だから。
そいつは、トラックくらいの大きさで、なんというか、「塊」という感じだった。質感は、いきものっぽい。表面はスウェードみたいな感じで、形は、形状は、なんていうか、ああ。
喋ろうとすると口から血がこぼれた。こればかりだな。
偸利。
効果はある。痛みがゆるみ、呼吸が楽になった。ほーじくんをせなかに庇いながら云う。「エクシザ、タス、戦って」
エクシザが俺の頭上にあらわれ、滑空しながらそいつへ向かっていった。タスは俺の目の前に出てきて、外套と、槍を一本足許へ落とし、もう一本の槍をかまえて矢のように飛び出す。大丈夫、ホートリットとレットゥーフェルだ。めったなことでは負けない。
もう一度、「塊」を見ながら偸利をつかった。なんといったらいいのか未だにわからないし、長く直視していたくない。記憶に残してはいけないもののような気がする。
二回の偸利でだいぶ、気分がよくなった。俺は血を吐き出し、手の甲で口許を拭う。
気配がして反対を向くと、また、訳のわからないものが目にはいった。それも複数。
「マルジャン、ヤラ」
立ち上がる。マルジャンとヤラが俺の傍に出現した。「ほーじくん……この子をまもってて。ヤラは、治療もお願い」
ヤラは、俺の治療と勘違いしたみたいだ。恢復魔法をかけてくれる。
「ありがとう。この子の治療もお願い」
ほーじくんは、砂に埋もれそうになっている。マルジャンがそれを前肢で掘りおこしていた。ヤラがぴょんと、少しだけはねる。
深呼吸した。休みたいんだって、俺は何回も思ってるのに、どうして休ませてくれないかな。
「そいつら」へ体を向ける。なんなのか、よくわからない魔物だ。さっきのは「塊」だったけれど、こっちはなんていうか、ああ。
脳が理解を拒んでる。直視したくない。少なくとも、地球上に居る生物とは、似ても似つかないものだ。表面がスウェードっぽいな、というのは、「塊」と同じだけど、色合いが……あっちは深い黄緑を汚したみたいな色で、こっちはもっと黄色い。なんなんだろう。
ダストくん達が収穫に出ていた場所には、こんなやつは居なかった。居たのはやすでさん達だ。だからここは多分、荒れ地でも深いところなんだろう。




