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頭痛ってなんなの? どうやったらなくなる訳? 俺これだいっきらい。
いらいらした気分で目が覚めた。空気がやけに乾燥している。咽がいがらっぽい。咳込むと、口のなかがざらざらしていると気付いた。砂……。
体を起こす。砂漠だ。
砂漠。
ここって、もしかして、もしかしたら、ああ。
え?
スタート地点に戻ったってこと?
ぼーっとしてたら砂に埋もれかけた。俺ははっとして、ぎゅっと握りしめていた魔力薬を収納し、とにかくなにか人間に関係するものはないか、村でも建物でも見えやしないかと、立ち上がって辺りを見る。砂を吐く。
ここって、もしかしなくても、荒れ地だろう。深度がどれくらいかで、危険がまったく違う。もしここが、荒れ地でも深いところだったら、危険が大きい。
各地の凶悪犯が、もとの世界でいうところの「死刑」相当のひと達が、荒れ地に遺棄されてきている。そいつらが荒れ地でいきのびていない保証はない。今まで、荒れ地から生還したひとは、何人か居る。遺棄されたばかりなら、魔力にも余裕があってぴんぴんしているかもしれない。見付かったらやばい。
そんなことをめまぐるしく考えながら振り向いて、心臓が停まるかと思った。
ほーじくんが倒れてる。
俺の危機察知能力は、チャタラだのホートリットだのレットゥーフェルだのと渡りあって、磨かれたみたいだ。感謝しなくちゃな。
いやな感じがして、ほーじくんに覆い被さった。それはまったく、正しい判断だった。次の瞬間、せなかに激しい衝撃があったから。
痛みで息がつまる。ほーじくんはまっしろな顔で、目を半分だけ開けて、顔や服や髪に血がついている。呼吸はいやな音がしている。ほーじくんのその様子を見て、俺の頭のなかで危険信号が点ったんだと思う。
「まお……?」
ああ、ほーじくんだ。
ほんの少しの期間離れてただけなのに、ほーじくんの声を聴いたらどうしようもなくなった。痛みと、ほーじくんの声とかかすかなぬくもりとか匂いとか、そういうものとの相乗効果で、涙が出てくる。
俺だよ、マオだよ、と云いたかったが、声は出なかった。それは純粋に、痛みの所為だ。俺は喋ろうとして、げほっと咳き込み、霧みたいに血を吐いてしまう。ほーじくんの顔にそれがかかった。
ほーじくんは目を閉じない。じっと俺を見ている。目を逸らしたら俺が居なくなるとでも思っているみたいに。
「まお」ほーじくんの声はか細い。「にげて」




