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レットゥーフェルがそう云った瞬間、どこかでなにかがつながったような感覚があった。猫の爪採りのニーバグの時みたいに、勝手に使役が成立してしまったのだ。あの時は初めてでよくわからなかったが、チャタラふたりにホートリットひとりを使役している今、なんとなく感覚がわかる。
レットゥーフェルの隣に座った。使役状態なので、安全だ。偸利と違い、悪しき魂だからききが悪いということもない。
エクシザが、ぶーっと、空気を吐き出した。そちらを見ると、エクシザの足許には、レットゥーフェルの装備品が散らばっている。食べ尽くしたらしい。
俺は苦笑いで謝った。
「ごめん、エクシザ。でも、人間みたいに会話できる魔物は、貴重だから」
エクシザは俺を睨んでいたが、不満げながらも目を逸らした。かと思ったら、のっそり立ち上がり、どてどてと歩いてくる。
俺はヤラを呼んで、レットゥーフェルの治療にあたってもらった。ヤラはいやそうにしつつも、水花や燕息をつかっている。レットゥーフェルの体がぼんやり光る。
「ええと、名前は?」
「コーフアータッシェーピーイィーハイー」
ながい。し、呼びづらそう。
俺の考えがわかったらしい。「タスでいい」
「ああ、ありがとう」
ほっとした。あと、めっちゃ短縮するじゃん、と思った。
エクシザが俺の隣に座りこんだ。ぐっぐっと咽を鳴らし、なにか不満を訴えているらしい。めちゃめちゃ睨まれてる。
なんなのかわからなかったが、タスが通訳してくれた。「そのホートリットは、腹が減っている」
「あ、そっか」
タスを食べるつもりだったんだもんな。
俺は収納空間から生肉を、エクシザの足許へ落とした。エクシザは満足そうにして、それをついばみはじめる。類は友を呼ぶ、というのが脳裏をよぎったが、気付かないことにした。
「ひとつ、よいだろうか、魔王」
「あ、俺、國立真緒。マオでいいよ。宜しくタス」
タスが体を起こして、軽く頷いた。
ヤラが飛び退く。おそれている様子だ。また、悪いことをしてしまったかな。
俺は四人に、魔力を譲渡し、状態異常を奪った。ぐらっと眩暈がある。ぎゅっと片目を瞑る。
「で、なにか要望?」
「ああ。兄弟達を弔いたい」
「ああ……」
タスはちょっと俯く。「それから、つかえる槍をさがしたい。槍がなくては戦えない」
「ああ、うん、あの。お弔いは、還元……ってことだよね」
「そうだ」
使役の効果なのか、タスの言葉はさっきよりも聴きとりやすかった。そういうの、あるのかなあ。
「いいけど、人間を見付けたら、危害を加えないで、逃げてね」
「ああ。お前の指示に従う」




