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「うん。魔王だよ」
そう答えて、ちょっと笑ってしまった。なんだよこの会話。
レットゥーフェルは、口をもぞもぞさせている。顔の右半分を覆うかぶとは、目の部分まで完全に覆うような構造をしていて、下のほうに小さな金属の板がぶら下がり、そいつが動くとちゃらちゃらいっていた。右目が見えないだろうに、邪魔じゃないのかな、あのかぶと。
三人の状態異常を奪い、息を整えた。素がたちのぼっているので、魔力の恢復がはやいらしい。気分がよかった。
レットゥーフェルは、還元で仲間に場所を報せようとしているのか、それとも魔力を補うつもりなのか……情況を見ると、仲間の槍の残骸や、服や胸当てなどを還元しているらしい。その辺りに装備品が転がっていた。
周囲には植物はない。おそらくこいつが、偸利で枯らしたのだ。それでもどうにもできなかったんだろう。墜落で死ななかったのが不思議なのだ。俺は多分、近場にあった別のレットゥーフェルの死体がクッションになったんだろうな。そういやあ、頭領(仮)、どうしたんだろう。
「ああ」
ふいっと思い付いて、還元の意味がわかった。「そっか。還元で、植物がもとに戻ると思ってるんだね」
あちらの世界では、還元をすると地形などがもとに戻るという謎現象がある。金脈鉱脈はそうやって復活させているのだ。植物もそうかもしれないな。畑で釘還元という儀式みたいなものも行われていたし、ドールさんが、素を集めて肥料にしなくても、畑で還元するだけでいいのにって云ってた。
だから、還元したら植物が繁茂すると思ってるんだ。そうなれば、その植物から偸利で生命力を奪ってしまえば、怪我が治る。
「賢いね。でも、こっちの世界では、多分効果がないんじゃないかな……」
あるかもしれないが、わからない。それにあちらでも、植物が即座にもとに戻ることはないんじゃないかな。成長がはやくなるとか、できる実が大きいとか、そういう効果があるってだけで。
俺は微笑んで、レットゥーフェルの傍にどっかり座りこんだ。レットゥーフェルはもごもごと喋る。
「お前の配下も、賢い」
「え?」
「チャタラどもが、わたしを殺そうとした。だが、ホートリットが、停めた」
エクシザが?
俺が、こいつに尋問するとでも考えたのかな。エクシザにも尋問したし、実際、いろいろ訊きたいことはある。もうレットゥーフェルは残っていないかとか、封印されたのか事故で来てしまったのかとか、封印されたのならどんな祇畏士にされたのかとか。
「食べる直前に殺したほうが、うまいと」
そっちかい。
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