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そこでやっと思い出して、マルジャン達から状態異常を奪った。どれくらいの間気を失っていたかわからないが、多分三頭とも無事だ。それなりにきつい眩暈と頭痛のあと、すっと気分がよくなる。
三頭を呼び出そうかと思って、辞めた。眼下にエクシザが見えたのだ。漂う素のなかで、レットゥーフェルの死体をついばんでいる。
なかなか、陰惨な光景だが、エクシザにとっては単なる捕食だろう。レットゥーフェルって、エクシザにとっては、人間よりもおいしいんだ。なんか、複雑。
よろよろと、地面に手をつきながら、斜面をくだっていった。途中の木の根を掴み、よっと声を出して着地する。「エクシザ、大丈夫?」
エクシザは俺を一瞬睨んだが、頷いた。ぴょいと、そのかげからヤラがあらわれ、とぶようにして俺の目の前にやってくる。脚に頬ずりしてきた。
「ヤラ」手を伸ばし、腰をかがめて、ヤラの頭をそっと撫でた。「マルジャンは?」
どちらも、妹をまもるのに尽力してくれた。ねぎらわないといけない。三頭に魔力を譲渡すると、エクシザが満足そうに唸る。
ヤラはひょいと、右前肢で斜め後ろを示した。そこから、槍をひきずったマルジャンがやってくる。ヤラが走っていって、マルジャンを手伝った。
俺は息を吐き、ゆっくりとエクシザへ近付く。
「怪我、平気なの?」
エクシザはぎゅっと鳴いて、くちばしでヤラを示す。ヤラに治療してもらったらしい。
チャタラ達が、力を合わせて槍を持ってきた。俺の足許へ置く。俺が槍を折ったり崩潰させたりしていたので、それをするだろうと考えたんだろうか。
なんにせよ、頑張って持ってきてくれたものだ。俺はふたりに礼を云い、ちょっと迷って、槍は収納した。崩潰させるだけの魔力がなかったのだ。
エクシザがレットゥーフェルの脚をくわえ、頭を振って、なにかを示す。そちらを向くと、レットゥーフェルが一頭、大の字で倒れていた。左腕が動いているから、まだ生きているらしい。
近寄ろうとすると、マルジャンとヤラが立ちはだかった。「平気だよ」
ふたりとも、疑わしそうに俺を見ている。それでも、道はあけてくれた。俺は会釈して、目についた藪を枯らしながら、倒れたレットゥーフェルへ近付く。どうやら、そいつが還元をしているらしい。
ああ……最初に来たやつだ。俺の挑発にのって仲間を呼び寄せ、最後は禍殃と偸利のコンボをくらって墜落した。生きてたんだ、こいつ。
俺を目視したみたいで、かぶとをかぶったままの頭がぎこちなくこちらを向いた。か細い声で、魔王、と云っている。




