3535
古木が見る間に枯れていった。それで、ようやく寝返りを打てる。それでもまだ、自由に動けない。苦労して、這いずる。
レットゥーフェルが倒れているのが目にはいった。生きているのか死んでいるのかわからないが、偸利をつかう。きいた感じがしないので、死んでいるのだろう。死体はどうしよう? 調べられたらまずい。
ふわっと、光の粒が舞っている。還元だ。
まだ動けるレットゥーフェルが居る。
「いい加減にしろよ」
低声でどくづきながら、素が流れてくる方向へ俺は這った。さっき見付けたレットゥーフェルの死体は、魔力を費やして崩潰させておいた。見付かってもちりだ。
少しすすむと、目につく藪や繁みを、偸利で枯らす。また少しすすむ。藪や繁みを枯らす。それを繰り返す。徐々に、体の動きはなめらかになり、痛みがひいていく。
ぐきっと激しい痛みが襲った直後、腰はまったく痛くなくなった。治ったみたいだ。ああよかった。
上体を起こす。割座のような姿勢になった。靴が片一方、どこかへ行っていて、またどくづく。
漂う素の数が多くなってきた。どこに居るんだ、レットゥーフェル。
ふらふらする頭で四辺を見る。草から生命力を奪う。きょろきょろしていて目にはいった竹林に、俺は思わず呻く。「開拓者、修復者、ありがとう」
普段なら絶対に云わないことを云って、竹林を偸利で枯らした。よし、だいぶ頭もはっきりした。魔力が手にはいったかどうかはわからないが、体力は確実に戻ってきている。
それでも立つのがおっくうで、俺はまだ這うようにしてしばらくすすんだ。素が多いのは、まだ下の部分だ。渓谷に落ちたんだよな、多分。あの高さから落ちてよく死ななかったよ。
這いながら、ちらっと上を見る。玉花荘がかすかに見えた。雨はまたふっているが、雨粒は小さいし量もさほどではない。雲がすくなくなり、空は明るくなりはじめていた。
俺は深呼吸して、よろよろと立ち上がる。あしが震えた。恐怖とか怯えとかじゃない。格闘が原因の筋肉痛だ。脚だけじゃなくて腕もぷるぷるしてる。
そこからも、目についたものを偸利で枯らしながら、移動した。靴が片一方だけでは歩きづらく、無事だったほうもぬいだ。尋常じゃない筋肉痛も、偸利をばんばんつかいまくってだいぶゆるくなってきた。恢復魔法は、筋肉痛にはききが悪いけど、偸利は筋肉痛にもかなりきく。
苦労して段差をおりていった。渓谷はすり鉢のような形状になっているようだ。ずっと下から、大量の素がたちのぼっている。




