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魔力がごっそり減り、マルジャンとヤラはぽーんととびあがった。そのまま、レストランの出入り口近くに落ちる。悲鳴が複数あがる。
マルジャン達はそれに一瞬、気をとられた様子だったが、まるでお客さん達に挨拶するみたいに一度姿勢を低くしてから、レストランへ這入っていった。マルジャン達と妹は面識があるから、大丈夫な筈だ。
俺は窓へ顔を向け、状態異常無効でもどうにもできない気分の悪さを鎮めようと、窓の向こうの奴らを睨んだ。「禍殃、偸利!」
一頭、すとんと降下する。だが、すぐにもとに戻る。
還元で外には素が沢山舞っているから、魔力の恢復がはやいのだ。魔力があれば癒しの魔法をつかえるから体力も補える。多分、あいつらにはそういう手段がある。魔法でないとしても、魔力と体力が一緒になっているようなパラメータかもしれない。魔物にはくわしくないが、こいつらはしぶとすぎるのだ。
がこんと音をたてて、窓の右側に大きな穴があいた。窓がらすがぐらぐらと揺れはじめる。
穴の縁を槍がこそげおとすように襲い、壁がまた大きく崩れる。還元も停まらない。俺は壁を攻撃する槍を四散でぶち折り、空中で停止するという愚行をおかした一頭を禍殃と偸利のコンボで仕留めた。そいつはあっけなく墜落していって、見えなくなる。めっちゃ威力あるじゃん。ああ、だいぶ弱ってたから、うまく避けられなかったんだなあいつ。
だが、いかんせん数が多すぎる。窓がらすはぐらぐら揺れ、ついにぎぎぎと音をさせながらこちらに傾いた。
レットゥーフェルが二頭、がらすへぶつかる。がらすはこちらへ倒れる。破片が飛んできて、俺は顔を庇う。右目に破片がはいって、眼球が傷付いた。慌てて破片をとりだす。右目が見えない。目視できなくなったら魔法をうまくつかえない!
なにか気配がして、俺の反射神経がめずらしく仕事をした。右腕がほとんど無意識に動いて頭を庇ったのだ。
なにかが肉を抉り、骨で停まった。尋常じゃない痛みは一瞬だけだった。脳みそが働いてくれたとみえる。痛みをブロックしてくれている。
あたたかい血がぽたぽたとたれてきた。左目だけで上を見る。痛い、とはあまり思わないのだが、涙が流れていた。
きらっと光るものが腕にくっついていた。槍だ。槍で切られたのだ。干した食材が好きでよかった。ヴィタミンDは骨形成に関わる。干し大根も干ししいたけも沢山食べてるもん。
槍を俺の骨にくいこませようと頑張っているレットゥーフェルが見えたので、俺はそいつに禍殃をかけ、偸利をつかった。




