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レットゥーフェル達はしかし、着実に還元をしていた。禍殃と偸利のコンボで一頭、四散で一頭、仲間を失っているからか、俺にとらえられないようにひらひらと宙を舞い続けている。目視が難しく、魔法がなかなかあたらない。ついでに、援軍第二陣がやってきた。こいつらどれだけ居るんだよ。
さいわいなのか災いなのかわからんが、台風の勢力は弱まっている。もしかしたら進路がずれたのかもしれない。直撃すると脅されてそれたことなんて何度もある。しっかり対策をとっていても来ないなら来ないで嬉しいので、気象庁に文句を云うつもりはまったくない。寧ろもう少しはやめに警報出してくれてもいいくらいだ。避難所へ向かう頃には道が水浸しで家が孤立しているなんて、多々あるからな。それで父親の実家に三日くらいとじこめられた小学生の夏休みを俺は忘れない。
俺にとってもレットゥーフェルにとっても視界は少しクリアになっている。あいつらが目に頼っているなら、風雨の勢いが弱まったのは俺には不利に働く。俺だって目に頼っているけど、あいつらも同じなら結局同じだけ有利になったってことで、さっきと状況かわらないじゃない。俺にだけ有利に働くようななにかが起こってくれないかな。俺って結構、運がいいから、それくらいの幸運はあってもいいと思うんだよね。
こんなところでレットゥーフェルの群れを相手にしてる時点で運が悪いかもしれないということには目を瞑った。
援軍第二陣も、ひらひら舞い続けて俺の魔法を避けている。俺の反射神経はくいもの関係以外ではあまり作用しないので、目視が難しい、くそ。
ひゃあ、というような叫びが聴こえた。
妹の声だ。
「水佳!」
レストランのほうを見る。でも、ここから俺が動いたら、窓の向こうのレットゥーフェル達が俺の魔法を避ける為の不規則な動きをやめ、還元に集中してしまう。そうなったら、窓がらすは落下し、そこからこいつらが侵入して、玄関扉の近くで震えているひと達に襲いかかる。
どっちもだめだ。
「マルジャン、ヤラ!」
背に腹は代えられない。俺が奇妙な生物を従えていたということになってももう仕方ない。妹が怪我するよりはいい。
マルジャンとヤラは、俺の足許にあらわれた。どちらも険しい表情だ。俺はふたりから状態異常を奪う。しばらくしていなかったから、強度は高かった。
ふたりが険しい表情なのはレットゥーフェルの存在に気付いているかららしい。俺はレストランを顎で示す。「妹が居る。まもって。ふたりが持てる分だけ魔力を分ける」
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