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「次は誰かな? 腰抜けのふぬけの臆病、脆弱な弱虫ども」
ささやくような発声でも、窓の周囲が壊れつつある今、あいつらには充分届いたらしい。からすの警戒音みたいな声をたて、二頭ががらすに突進してきた。勿論、槍をかまえている。
がらすから槍が二本、飛び出してきた。俺は顔に降りかかる雨を拭い、息を整えて、槍の途中辺りを見詰める。「四散」
鈍い音がして、槍が片方折れた。もう片方は、魔法をつかう前に逃がしてしまう。四散は難しい。苦手だ。
怒りはいいけど、きちんと昇華できないと、子どもがだだこねてるのとかわらないぞ。子どものだだなら超絶可愛いけど、お前ら可愛くねーし。
槍がぽっきり折れてしまったレットゥーフェルは、槍を放り捨てた。がらすがない部分から見ると、よくわかる。そいつに狙いを定める。
「四散」
間違ってがらすを爆発させるようなばかは、さすがの俺でもしなかった。槍を捨てたレットゥーフェルの左肩がはじけ、左の羽がぶらんと下がる。「四散」追い打ちをかけると、そいつの左腕がぽろっととれた。そいつはそのまま、墜落した。あんまり気分のいいものじゃない。
レベル上がってくんないかな。俺だいぶ疲れてるぜ。気力が持たない気がする。ほら、ゲームによったら、レベル上がった瞬間HPもMPも全快してくれたりするじゃん? そういう慈悲はない訳? 開拓者?
ないんだろうな。ていうか、レベル上がってないと思う。だって魔法の威力があんまりかわらないもん。体力が上がった感じもしない。まあレベルが1上がっただけではいやがらせ程度にしかパラメータが伸びないってことかもしれませんけどね。不名誉職ダントツの魔王なら、それくらいありうるか。
魔法戦というのは、ユラちゃんを見慣れている所為で、ど派手なものだと思っていた。でも違う。俺のは地味だ。っていうか、俺が魔法を攻撃につかうのになれていなくて、じっと身動きとらないでしっかり相手を目視してっていう手順をとらないといけないからかな。派手に攻撃をしたり、ひらりと攻撃を避けたり、そういうのはない。
避けなくても、意識さえ失わなければいいのだ。俺には相手から体力や魔力を奪う魔法がある。
という訳で、俺の戦闘はひたすら地味である。動いているのは窓の外のレットゥーフェル達ばかりで、俺はじっと仁王立ちし、そいつらを睨んでいる。口のなかでもごもごと、偸利だとか禍殃だとか云い、魔法をつかう。呪文を唱えないとだめみたいなのじゃなくてよかった。それだけは開拓者に感謝する。




