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レットゥーフェルが甲高い声を発した。がらすが揺れている。種族としてのプライドが、武器をつかう魔物としての矜持が、俺の言葉をゆるせないらしい。
で、やっぱりレットゥーフェルであってるのな。成程々々。まじで厄介じゃん。冒瀆魔法がきく相手がよかったよほんとに。勘弁してくれ。
甲高い声が途切れ、続いて耳障りな、アルミフォイルをぐしゃぐしゃするみたいな音が聴こえた。それはすぐに終わり、レットゥーフェルは窓から距離をとる。
いやな予感がしてとび退った。次の瞬間、窓がらすの向こうに、膨大な量の光が発生した。
還元だ。
俺には還元の力はないし、還元は他者が停められるものではない。どうしようもなく、唖然としている。ていうか今までどうしてつかわなかったんだよ。
その疑問はすぐに解消した。窓がらすがぽっかり消失している、なんてことにはなっていないからだ。どうやらこのレットゥーフェルは、がらすを還元できないらしい。そのかわりに窓の上部が、ほんの少しだけだが、音を立てて崩れ落ちた。「禍殃、偸利。禍殃、偸利」
慌てる俺の魔法に、レットゥーフェルが叫び、上下に動く。急上昇したり急降下したりの乱高下だ。苦しんでいる。それでも、また還元をつかい、建物がその分削り落とされる
がらすは還元できないし、還元できる建物は少ししか削れない。その間に俺に攻撃される。それがいやで、還元を温存していたらしい。
でも、多分あいつは、知能が高くて気付いたのだ。
この窓がらすは、あちらの世界のがらすのようなもろい代物じゃない。だから、攻撃して破ろうとすれば、結局は還元で時間をかけるのと大差ない。
そして、窓の周囲を還元してしまえば、破るのに時間のかかる窓がらすを攻撃する必要はない、と。
知性が云々知能が云々というのがいやになってきた。こいつらまじで厄介だ。還元そのものが二重に厄介である。ものがなくなり、還元することで発生する素は魔力のもとになる。あいつは俺に奪われた魔力を、還元で補おうと、そこまで考えているのかもしれない。
賢いっていやになるよな。
俺は禍殃と偸利のコンボを続ける。魔力が補われているのがわかる。だがあいつは、還元を諦めない。侮辱されたのがよほど悔しいのだろう。
そして、俺の侮辱は凄く効果を発揮した。耳障りな音を立てながら、雨と雷を背景にして、別のレットゥーフェル達がやってきたのだ。




