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 少なくとも、魔物なのは間違いない。こんないきものがこちらの世界に存在しているのなら教えてほしいね。こんな顔で、普通に宙にういてるんだぞ。羽はあるかもしれないが、雨で見えない。

 どんっとがらすが叩かれ、揺れた。悲鳴の合唱だ。皆さんいい咽をしていらっしゃる。

「静かに!」

 肩越しに背後を見て云う。怯えとか恐怖とか、とにかくそういうネガティヴな感情が見てとれる表情のひとばかりだ。

 がらすがもう一度揺れ、悲鳴はやっぱりあがり、俺はがらすに向き直る。更に近寄る。魔物にばんばんやられても割れないこちらのがらす、最高だ。開拓者が居ない世界の技術力、舐めんなよ。環境問題だってなあ、なんとかなるんだよ。諦めて世界を放棄した神さまとは違うんだ。

 魔物だってこんなふうにのさばらせてるしさ。

 がらす越しに魔法がきくんだろうか、と躊躇したのが俺のばかなところだ。外のやつはがらすから離れ、なにかしたらしい。がらすにひびがはいる。


 冒瀆魔法は、ものを壊すのがお得意だ。修復するのには向いていない。大地の魔法でもつかえたら、壁をつくるなりなんなりできそうだったのに。

 養生テープは優秀だった。がらすが一部ひび割れたが、破片が散らばることはない。あいつ、なんか持ってる。

 槍? 棒? 杖?

 武器を持っていて、人間サイズ。聴いたことがある。多分……レットゥーフェルだ。

 血の気がひいた。もし俺の乏しい知識に基づいた推理があたっていたとしたら、まずいぞ。レットゥーフェルは、冒瀆魔法をつかう。悪しき魂を持っているのだと思う。そうなると、冒瀆魔法のききは悪くなる。

 ちゃりんと音がしてもう一ヶ所ひびがはいり、小さな破片が飛んできた。頬が切れる。「偸利」

 傷がむずむずして、治った感覚があった。大丈夫だ。窓越しでも、多少はきく。多少は、というのは、相手に弱った様子がないからだ。

 悲鳴は断続的に響いている。誰かが休憩をとると誰かが叫ぶのだ。切れ目はない。途切れない。

「偸利」

 間違ってがらすを破壊してしまう危険を考え、偸利にしぼった。それに、昏冥や穢土は、相手が地面に接していないとききが悪い。あいつは今、悠々と宙にういている。

 稲光が走った。あいつがなにかして、がらすが一瞬クリアになる。四散でもつかおうとしたのか。

 全身が見えた。だらりとした服を着ている。金属製に見える胸当てと、頭の右半分だけを覆うかぶと、首まわりをがっちりまもっている喉輪。

 手には、メスを大きくしたみたいな槍を持っていた。せなかにはご丁寧に、羽がついている。


感想ありがとうございます。はげみになります。

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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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