表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3655/6868

3515


 悲鳴とどよめきが聴こえてくる。「なに?!」

 俺は立ち上がって、膝からブランケットを落としてしまった。地震……か? まるで、なにかが近場に落ちたような揺れだった。

 うずくまって頭を庇っていたスナガミさんが、ぱっと顔を上げる。が、体はまるめたままだ。

「今の、なんですかね? じ、地震かな」

「さあ……」

 としか云いようがない。スナガミさんは、いつもと違ってか細い声だ。「ぼ、ぼくは、じしんはだめなんです。こ、こわいんです」

 スナガミ夫人がスナガミさんの傍にやってきた。隣にしゃがみこんで、夫のせなかを撫でてあげている。走りまわって遊んでいた子ども達も、ぱーっとやってきて、親達の服やなにかを掴む。不安げに俺を見てきた。俺は、微笑もうとするが、うまくいかない。子ども達は目をきょろきょろさせ、周囲を見ている。


 フロントの男性が声を張り上げた。「地震ではありません! 津波の心配もございません!」

 手許を見ている。速報がはいるようになっているのだろう。地震ではないのなら、とりあえずは安心だ。高いところだから、津波の心配はそもそもないだろうけれど、それを明言されるとやっぱりほっとする。

 妹が爪先だって、カウンタに寝るようにしてそれをのぞきこみ、こちらへ走ってきた。あおざめている。

「地震やないって。なんかとんできて、ぶつかったんかもしれんな」

 それが順当だろう。地面が揺れたように感じたが、そうではなくて建物が揺れたのだ。台風で飛ばされたものが家にぶつかった、という話をきいたことがある。大きな音と揺れに、地震かと思ったらしい。

 ふと不安になって訊く。

「大丈夫なんか、ここ。ぶつかったとこから、雨漏りしたりとか?」

「大丈夫やと思う。核シェルター並みやって、おじさんの自慢やから」妹は窓、玄関、レストラン、と、視線を動かす。「それは冗談としても、ほんとに強度は高いよ、この建物。おじさん昔、旅先で火事に遭ってから、ホテルとか旅館の耐久度とか防火とかに、異常に煩いから」

 絹を裂くような叫びがあがった。

 俺と妹は揃ってそちらを向く。ここはおじさんの旅館で、親戚である俺達は従業員ではなくてもそれなりに責任はある、と思っている。だから、なにかあったら対処しないといけない。場合によっては従業員よりもはやく。

 悲鳴が次々に上がった。妹が息をのむ。養生テープをべたべたと張られた、特別製の強化がらす窓の向こう、滝のように流れる水でよく見えないその空間に、なにかが居る。窓のすぐ外に、なにかが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ