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「ありがとうね」
妹が三人に、やわらかく云う。「寒いでしょう。わがまま云って、ごめんなさい。これはわたしと兄でなんとかするから、あなた達ははやくきがえて、あたたかいものでも飲んで。ほんとにごめんね。ありがとう」
三人は口々に、いえ、とか、こちらこそきちんと連絡できていなくて、とか云いながら、水のしたたるかっぱを脱いでハンガーにかけ、そのハンガーを出入り口近くのラックに掛けて、ぺこぺこしながら歩いていった。俺達はそれを見送り、息を吐く。
気のぬけた声が出た。
「この間、もうあったんか」
「やって」
「気付かんかったな」
妹は頷いて、くいっと肩をすくめる。
「ほかにもいろいろあるし、倉庫の奥の端っこにあったから、運び込んだひとくらいしか知らんわ。わたし達は、カカオの木やって、見てもわからんしな」
妹は溜め息を吐いて、カカオの苗木を示した。「わかる? お兄ちゃん」
「わからんわからん」
俺は苦笑いで、床に収納空間を開く。
さいわい、東の端は本来従業員しか立ち入れないところみたいだし、妹が俺の後ろにまわって見張りをしてくれた。誰も居ないのをたしかめ、収納する。監視カメラはあるそうだが、死角にはいったのでそれも問題はない。
よし。カカオの苗木、手にはいった。耕作人や、農芸者を、うまいこと雇えればいいけど、どうなるかな。
「それぞれ違う種類やって。ああ、それと、あっちに別の荷物も置いてある」
「え?」
妹が指さすほうを見た。
「おじさんが注文したものがいろいろ。チョコとか、ノート類とか……お塩が何種類もあったわ。お兄ちゃん、お塩高いって云うてたやん?」
ああ、そんな話もしたっけ。
妹の案内で歩くと、段ボール箱が大量に置いてある場所に着いた。そのうちのほぼすべてが俺のものらしい。これらは、倉庫ではなくこの建物(本館とでも云うかな)のなかへ運び込まれ、そのままになっていたそうだ。さっきカカオの苗が見付かったタイミングで、「ほかにも連絡もれがあるのでは?」とたしかめたら、案の定だった、とのこと。
箱の中身をたしかめると、岩塩とか、海塩とか、藻塩とか、パック詰めされたものがいろいろあった。箱ごと収納する。
お塩だけでなく、お味噌やお醤油、かつおぶしなどもある。おじさんが手配したものもだし、俺が注文したものも届いていたのだ。忘れてたわ。
裾野では手にはいりにくかった調味料(お塩、お味噌、お醤油など)をはじめとして、高級チョコレートや高品質な油脂類、近くの高原でつくられているバターなど、俺があちらに居てほしかったもの、高いと思っていたものが揃っている。そうそう、チーズなら沢山手にはいるけど、バターはほんのちょっぴりで凄い値段なんだよ。
寒天やゼラチンのパウダー、それに食材だけではなく、文房具も沢山。おじさん、有能すぎる。




