表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3649/6868

3509


 俺は口をぽかんと開けて、動き出そうとした姿勢のまま停まる。え?

 女の子達は元気そうだった。それぞればっちりメイクをして、しっかり髪を整えて、おしゃれしている。

「仲好しなんですね」

「は?」

「あ、わたし達ネットで動画配信してるんですけど、素敵な旅行エピソード、インタビューさせてもらってもいいですか? 結構フォロワー多くて、いろんなひとに見てもらえると思います」

 途端に、男性は肩を丸め、もごもごと断ってロビーの隅へ逃げていった。女性が女の子達にぺこぺこしながらそれを追いかける。

 まあ……いやたしかに、旅行苦手でも奥さんが心配でついてきてるみたいだから、悪い旦那さんではないんだろう。喧嘩もおさまって、ふたりはしょぼんと肩を落とした状態ながらも、ひそひそ喋っているし、大丈夫かな。

 それよりも、女の子達だ。四人揃って、フロント傍で立っている。ギプスなどは見えない。怪我、なかったんだ。よかった。

 そのうちのひとりと目が合った。会釈され、会釈を返す。あとの三人も会釈をくれた。

 支配人がやってきて、女の子達がぱっと群がる。支配人は優しい表情で、四人に話しかけた。「皆さん、疲れているでしょう。座っていたほうが宜しいのでは?」

「大丈夫です」

「あたし達、全然元気ですよ」

「ね」

「支配人さんが庇ってくれたもんね」

 支配人は首をすくめる。

「追い払ってくれたのは真緒さまですから」

 それからしばらく、五人はもしょもしょと会話している。どうやら、昨夜のうちに、四人はここに戻っていたらしい。その段階では台風のことは心配がない情況だった、ということだろうか。随分急速に発達したものだ。


「あの」

 妹にクッキーを与えていると、女の子のうちのひとりがとことことやってきた。妹がクッキーを飲み込む。「はい」

「あ、えっと、昨日はどうも……ありがとうございましたっ」

 頭を下げられた。俺はぽかんとしてそれを見ている。妹も似たような表情になっていた。

 女の子は頭を上げて、小さい会釈を数回する。

「あの、助けに来てくれて……ここ、みんないいひとばっかりで、だからわたし達、ちゃんとPRしたいんです。それで、お医者さんも大丈夫だって云ってたし、戻ってきて」

 ああ、そういう経緯だったんだ。そっか。

 じゃあ、俺がやったことは、少しはこの旅館の為になったんだな。なら、いいかあ。

 俺と妹は顔を見合わせ、どちらともなく笑う。あとの三人がおずおずとやってきて、やはり、お礼を云ってくれた。いい子達だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
[良い点] 荷物とかもあっただろうけど、戻って来ようと思えるくらいの事だったかー、よかったなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ