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困っているのは俺達だけではない。マルジャン達が心配だった。
といっても、ロビーで呼び出す訳にいかないので、俺は状態異常を奪う頻度を更に上げ、それにくわえて魔力をたまに譲渡していた。
体力はそもそもが乏しいので、分けることはできないが、魔力ならなんとかなる。魔力を恢復するまずい丸薬なら、まだあるし、気分が悪くなったらそれをつかえばいい。
状態異常は即座に無効化されるから、頻度を上げたほうが寧ろ(マルジャン達の状態異常が強化される前に奪えるので)楽なのだが、魔力に関しては楽ではない。確実に、着々と、俺の魔力は目減りしている。それは、感覚的にわかる。ユラちゃんはこれを、魔法をつかう時にも、かなりしっかり認識できるんだよな。凄いなあ、あの子。っていうか、魔法系の職業を目指していた子達は、そんなの当たり前なのかな。御山だと。
レストランから数組、お客さんが出てきて、別のひと達が這入っていった。俺と妹は、フロントの傍でそれを見ている。オーナーの親戚という立場上、一般のお客さんをおしのけてレストランに這入る訳にはいかない。旅館の評判に傷がつく。たまにレストランから配られるお菓子類も、ほかのひと達に先を譲り、そうすると大体、俺達にはなにも残らないのだった。みんな、不安を解消する為に、食べている。それくらいしかやることはない。それができない食の細いひとは、周囲のひとに断ってソファに横たわり、目を閉じていた。
おなかはすいているが、我慢できない程ではない。上着の内ポケットから出したふうに、お菓子をとりだして妹へ渡す。「ありがとう」
「ああ。朝ご飯、なに食べる?」
「牛一頭でも食べられそう」
妹はかなりおなかがすいているらしい。クッキーを二枚、丸呑みみたいに食べてしまった。
お土産のお菓子類も、俺達がロビーに到着した頃には売り切れてしまっていた。そもそも、物流が滞っているので、あと数十箱というところだったらしい。台風騒ぎで、みんな食糧確保に躍起になっている。
妹は指についたクッキーくずをぺろっと舐め、もそもそ喋る。「マルジャンちゃん、大丈夫かな」
マルジャンをよほど気にいったらしい。俺はふふっと笑う。
「大丈夫だよ。状態異常は俺がとってるし、魔力を少しずつだけど渡してる。こうしておけば、魔法で色々できる」
「そう? でも、今度の台風、大きいらしいし、心配やわあ。進路、かわらんかな……」
俺は妹の頭を軽く撫でる。たいしたことじゃない。台風なんて、この辺りではよくある。




