3500
安心安全な魔物って、言葉としておかしい気もするが、あちらの世界では実際そういう扱いだった。
動物のなかで一番安全なのはトゥアフェーノで、それは魔につかれても弱いままですぐに魔がなくなるから。魔物のなかで一番安全なのはニーバグで、それは魔につかれていても人間に敵対的な行動をとらず、ひとなつっこいから。
それが、あっちの常識である。
だからやっぱり、ニーバグが封印されていると考えるのは無理があるのだ。
でも、マルジャンにも訊いたが、フランスでの目撃情報はニーバグらしく感じる、みたい。ってことは、ニーバグがこちらの世界に来ているのは間違いない。
ほーじくんが、ニーバグを封印しているのだろうか。
封印をつかえる祇畏士は、居なかった。単に、神聖府が公表していなかっただけかもしれない。けれど、封印をつかえる人間がめずらしいってこと自体は、事実の筈だ。もし封印をつかえる人間が沢山居るのなら、ほーじくんが封印をつかえるかもしれないからって、あんなふうに祇畏士の協会が囲いこもうとはすまい。
俺みたいな、体力の乏しいどうでもいい仕事(と神聖府が考えているようなお仕事)をしている人間を捕まえて、脅してみたり、金でどうにかしようとしたり。
あれだけの執着を見せると云うことは、封印がめずらしくて、ほーじくんは神聖公にすれば流出してほしくない人材だ、ということだ。だから、世界各地で見付かっている謎の生物が封印されたものであれば、ほーじくんが関わっていると考えるのはおかしなことじゃない。
でも、だとしたら、尚更わからない。封印は、やっぱり、軽々しくつかうものでは絶対にないからだ。
チャタラは、わかる。封印できるかたしかめる為につれてこられたものだった、のだろう。最初から檻が用意されていたり、生け捕りにするつもりだった訳だから。
サイズ的に運びやすく、またもし逃げ出しても御山なら対応は完璧にできた。危険は少ない。
ホートリットでも、封印するのはそうおかしなことではない。歴戦の傭兵でもおそれるような魔物だし、リューさんがホートリットを殺したあと、ほかに居やしないかと、警邏隊が付近をくまなくさがしたと聴いている。それって、もしまだ居るなら大きな危険があるってことだろう。
レツシュバ……とか、その辺りでも、もしかしたら見た目は普通のレツシュバでも、凄く大きな魔につかれていて、凶悪な強さのやつが居たのかもしれない。それなら、変なことじゃないだろう。人間でも見た目に反して強力なスキルを持っていて、強い、ということもある。




