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「ごめんね、マルジャン。疲れたでしょう」
マルジャンは憐れっぽく、しゅう、と鳴く。実際、疲れているのだろう。事情がわかったので、ふかし芋をもう一度示すが、マルジャンはちびちびと食べるだけだ。食事のすすめかたに勢いがない。木の根も、かみしめたような痕があるが、あまり食べられてはいないらしい。それだけ疲れている、ということだ。
しかしエクシザのやつ、一回呼び出して、説教しないとだな。
ホートリットが強いのはわかるけれど、偉そうにするのはよくない。大体、マルジャンとヤラのほうが先に俺に使役されていて、エクシザのいわば先輩なのである。先輩に敬意を払わないなんて、よくない。
第一、強い・弱いで、俺に使役されている魔物の序列が決まる訳ではない。俺にしてみれば、封印に関する情報をくれたマルジャン達は、人間を襲おうとしたエクシザよりもよほど頼れる。エクシザは態度もよくないし。
腕を組んで、エクシザにどう説教するか考えていると、妹が小さく咳払いした。俺はそちらを見る。
呆れた目をされた。「お兄ちゃん。忘れてる?」
「なにを?」
「ニーバグ」
「あ」
ようやく、本題だ。
マルジャンはちびちび、ふかし芋を食べながら、俺の質問を聴いている。「ニーバグって、わかる? これくらいの、まるっこくて」
肯定があった。こうもりみたいな顔のだよ、と云うと、マルジャンはちょっと面白そうにしながら頷く。こうもりみたいというのが当を得ていて面白かったらしい。
「じゃあ、封印のことなんだけど、封印って、強かったり、どうしようもない魔物に対してつかうものだよね」
ちょっと迷うような間があったが、肯定された。「断言できないってこと?」
それにも、頷きが返ってくる。マルジャンはかなり慎重な性格で、ヤラよりも決断に時間がかかる。でもそれは、ふたしかなことをこうやって話す場合には、助かる性格だと思う。勘違いが減りそう。
「それじゃあさ、人間がニーバグを封印する可能性、あると思う?」
マルジャンはふかし芋にくっつけていた顔を上げ、不審そうな表情をうかべた。それから、ふるふるっと振っている。やっぱり、あちらの世界でニーバグを知っていたら、そういう反応になるらしい。
念の為に、妹が云っていたことも訊いてみた。
「ニーバグが凶暴になって、人間を襲うってことは? あると思う?」
マルジャンはちょっと考え込んだ様子だったが、結局は頭を振った。そうだよな。考えがたい。ニーバグは安全で、安心な魔物なのだ。




