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うんうん唸りながらかたまっている俺に、妹は心配げな目を向けてくる。「お兄ちゃん? ちょっと、大丈夫?」
「大丈夫」
反射みたいに答える。それからこめかみをおさえる。「大丈夫なんやけど……うーん」
「なに? 大丈夫やないんやないの?」妹は表情を険しくする。「もしかして、もの凄く強い魔物?」
「いや、俺でもなんとかなるくらいのやつやと思う」
妹は口を半開きにし、数回瞬いて、口を閉じ、それからまた顔をしかめて口を開く。
「お兄ちゃんでもどうにかできるやつを、どうして封印するん? おかしいやん」
凄く的確な指摘だし、俺とほぼ同じ感想なのだけれど、なんか釈然としないぞ妹よ。
ニーバグについて、かいつまんで説明しながら、歩いた。妹は頷きながら俺の説明を聴き、不可解そうに眉をぐっと寄せる。
「やっぱりおかしいやん」
「そうだよな」
「運が関わるかもしれんのやろ? 傭兵達が殺したがらないってことは、それだけそっちの世界では大切にされてるってことやろうし、そもそもお兄ちゃんでどうにかできるくらい弱っちいし」
「お前な」
「冗談じゃなく、そうやん」
う。云い返せない。
修復者が絡むだけでなく、ニーバグ自体強いものではない、というのはそうなのだ。だから、それが封印されているというのに、違和感しかない。
ロビーの直前で、妹が立ち停まった。俺は数歩行って、振り返る。
「どうした?」
妹はちょっと、むっとしたような顔になっていたが、とことこっと俺の目の前まで来た。そして、低声で云う。「もしかしたら、ニーバグのなかでも凶暴なやつとか、凶悪なやつがおるかも」
「ええ? そうかなあ。それはちょっと……」
だとしたら、ニーバグに遭遇した時に、セロベルさんが教えてくれている気がする。俺は非常識で、ニーバグそのものを知らなかったし。
でももしかしたら、妹の云うとおりで、ニーバグのなかでも凶悪なやつが居るのかもしれない。
そういうやつが、人間にお菓子を分け与えようとするかどうかは疑問だが、お菓子を分け与えるのはニーバグ同士でやっていたし、もしかしたら小さな子どもをニーバグと間違えたのかもしれない。間違えたのではなく、自分の手下になれ、みたいな意味でのお菓子だったのかもしれないし。
といっても、たしかめようはない。なので俺は、肩を軽くすくめる。「だとしても、俺には判断できないよ」
妹は更に声を低めた。
「ニーバグが封印される可能性があるか、訊いてみたら? チャタラに」




