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うーん、無理があると思うんだけど。検疫所をなんだと思っているのか。
でも、事実がどうだろうと、そういうふうに疑いをかけられているのはそうなのだ。疑われるのは俺の責任じゃない。どうしようもないことである。それが実現可能かとか、現実的かとかは、今の段階では警察には関係ないのだろう。
とにかくいろんなことを考えて、少しでも「ありそう」な線なら、それをたしかめる。だめなら別の角度から捜査する。
警察みたいに人海戦術をつかえる組織が、最初からひとつの説にしぼる必要もない。ひろくいろんな可能性をさぐって、だめなら方向転換するという方針なのだろう。
まあな。密輸説は、「異世界から魔物が送りこまれてきた」説よりはよっぽどまともだし、リアリティはある。
あいつらは異世界で封印された魔物で~と俺が事実を云ったところで、おそらく信用されない。違法薬物でもやっているのかと尿検査や毛髪検査させられるのがおちだ。
その点は安心だな。マルジャン達が実際に捕獲でもされない限りは、どこかの新種の生物くらいにしか思わない。見付かって遺伝子検査されたらやばそうだが。
ついでに、密輸説と、国内で遺伝子組み換えによりつくられた生物が逃げ出した説とが拮抗しているらしい。
後者の説の場合、俺は無関係だと思うのだが、おじさんごと疑われている。おじさんが農業にも手を出しているので、農園でそういった作業をしているのでは? とかなんとか疑われているのだ。できるもんなのかどうかは知らない。警察もまだ考えてはないと思う。
しかし、嫌疑の範囲に居るおじさんが、よくここまでききだせたな。ピンポンダッシュ、ゆすりの材料として超絶優秀じゃん。
支配人が憤慨している。怒りながらお菓子を頬張っていた。
「とんでもないことでございます。真緒さまに妙な疑いをかけて、オーナーにも……」
怒りのあまりか、お菓子が咽に詰まったようだ。慌てた様子でレモンティを飲んでいる。おじさんがあきれ顔で、支配人のせなかをやわらかく叩いた。「そげえ、はらかくな。しよんねえことじゃろう。警察は仕事しよるだけじゃ。しゃんとしちょって、ありがてえことじゃねえか」
おじさんの云うことは頷けた。
警察だって、遊んでいる訳ではないのだ。疑わしい事柄を寝ずに調べている。調べる前から可能性を潰すようなことはしていない、ということでもある。ひとを疑うのもお仕事の一部であって、好きでやっている訳ではない。




