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「なーんじゃろうなあ。あらあ」
おじさんはお菓子を食べながら、気のぬけた発声だ。その隣に腰掛けた支配人が、かろうじて残っている数個をぱっと確保している。よっぽど、このお菓子が好きらしい。
「真緒さまを疑っているような口ぶりでしたね」
「ああ。お前、あげえ怒らんでもいいにい」
「真緒さまはわたしとお嬢さんがたの命の恩人ですので」
支配人はお菓子の包装を解いて、ぱくっとひと口で食べた。おじさんが苦笑して、こちらを見た。
「よおねえな」
「お兄ちゃんが悪いみたい。はらたつわ」
妹は完全に機嫌を損ねていて、むっつりしている。俺は妹の頭を軽く撫でた。「まあ、怪しいのは事実だからな」
「じゃあ訊くけど、地震でお家が崩れて、親戚の家に避難して、そっちでも地震が起こったら、そのひとの所為?」
「それは違う」
「じゃあお兄ちゃんも同じでしょ? たまたまいきおうただけやん」
支配人がふたつ目を頬張りながら激しく頷いている。おじさんが俯いて肩を震わせた。面白がっているのだ。
おじさんがうろうろしながらケータイでどこかへ連絡している。支配人は出て行って、お菓子の箱とお茶をワゴンに積んで戻ってきた。俺と妹がお菓子の箱に目をまるくしていると、自慢げに胸を張る。「フロントで売ってるんです。オーナーにつけました」
妹はレモンティ、俺はアップルティを楽しんでいると、通話を終えたおじさんがうろうろをやめた。戻ってきて、座る。
で、おじさんが教えてくれた。俺はやっぱり、疑われているらしい。どこの世界でも疑われるのだなあ。
おじさんが連絡していたのは、中学校の後輩の子ども。今、警察で結構上の地位に居るらしい。まだお金がなくてトレジャーハントしていた時代のおじさんを知っていて、今ではおじさんの旅館の常連さん。小さい頃していた悪さ(柿泥棒とかピンポンダッシュとかの、地味だけど被害がそれなりのやつ)をネタにして、情報をゆすりとった。持つべきものはすねに傷持つエリートやのうとおじさんは上機嫌である。うーむ。
その気の毒なエリートさんの情報に拠れば、謎の生物は外国から密輸された貴重な生物と目されている。あんな不思議生物外国にでも居るか? と思ったけれど、遺伝子組み換えとか、新種とか、そういうふうに考えてるみたい。
そういう奇妙な日本に居ない生物を、勝手に持ちこんでいるひと、もしくはひと達が居る。それが警察の考えていることらしい。で、俺がその一味ではないか、と疑われている。
感想ありがとうございます。はげみになります。




