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 俺は正直にうんざりしていたので、ついきつめの声が出た。「まだ、なにかありますか。もう全部話しましたよ」

「あ、はい、ええと」

 ケータイのおにいさんが、ローテーブルの上の見取り図を覗きこんでいる。玉花荘と、その周辺のおじさんの敷地の見取り図だ。俺が思っていた以上に、おじさんはひろい土地を持っていた。田舎だし交通の便は悪いし、まかり間違っても高速道路が通ったりはしないひなである。だから土地は安い。

 おにいさん達はよほど、俺を怪しんでいるのか、低声(こごえ)でもそもそ喋っている。妹が俺の袖をくいっとひっぱった。俺は妹を見て、わざとらしく肩をすくめてみせる。

「あのー」

 ノートのほうが云った。「國立さんは」

「はい」

 俺と妹の声が揃い、おじさんも姿勢を正した。國立姓はこの場に三人居ると思い出したみたいで、おにいさんは云いなおす。

「真緒さんは、ええっと……八月三日にも、その……野生動物と遭遇していますね?」

 八月三日?


 ちょっと考えてから俺は、あー、と云った。そうだそうだ。忘れてたわ。八月三日、オーダー24のコンポスト付近でチャタラを見付けて、使役した。

 いやでも、あの時は逃げたんだった。店員さんがひとり、俺が國立真緒であると気付いたみたいだったけれど、今に至るまでマルジャンのことで警察に呼び出されたり話をきかれたりはしていない。

 ってことは、あれだな。ヤラのほうだ。あの日の夜、博物館へ行って、そこにヤラが侵入してきた。あの時は展示物のケースが壊されたり、それに直前に妹の指環が盗まれたりしていて、警察がすぐにやってきたから、逃げ隠れすることは不可能だったのだ。だから、聴取にも応じているし、連絡先や名前などの個人情報を明かしている。あとから一回電話もあったんだっけ? 翌日、おじさんのところへ行こうと思い立って移動したから、その辺あやふやだ。

 俺は数回、小さく頷いた。詳細は忘れているが、チャタラと遭遇したことは間違いない。警察はきちんと記録をとっているから、このひと達は俺がチャタラに遭遇したことを知っているのだろう。

「あれですよね。猿みたいなやつ」

「あ……猿みたい、ですか」

「はい」

 チャタラは、猿とくもをまぜて可愛らしさをとっぱらった、みたいな外見をしているのだ。もっと可愛い魔物がよかったと今でもちょっと思っている。ニーバグとか、ツィティジアーとか、いっぱい居るじゃん? 可愛いの。

 おにいさん達は顔を見合わせて、また、低声(こごえ)でもしょもしょやる。いちゃいちゃしてんのかな。


感想ありがとうございます。はげみになります。

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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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