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おじさんに云ったとおりで、俺達は特に嘘を吐くでもなく、魔物だとか使役だとかについては話さないだけだ。
「ええっと……」
ソファに座って向かい合い、俺達がひととおり経緯を話すと、ノートにメモしているおにいさんがこめかみをおさえた。「ロビーで、たまたま、その鳥を見たんですね? 渓谷に?」
「はい」
頷く。実際、俺はホートリットをたまたま見付けた。くだらないもの思いに沈んで、高所恐怖症なのにあんなところに居たから。
おにいさん達は顔を見合わせ、小首を傾げる。
「あの」
「はい」
「その……それを見て、急いで下まで行ったんですよね?」
頷く。「はい」
「ええと、その鳥が、危険だと、どうしてわかったんですか?」
一瞬間があいた。
妹がひゅっと息を吸い、なにか云おうとしたが、遮って俺が云う。「いや、そりゃあわかりますよ。渓谷って相当深いんですよ? そこを上から見て、目で見て鳥だってはっきりわかるってことは、相当な大きさですよね」
妹が俺へ顔を向ける。俺は思わず、といった感じで、ちょっと笑った。
「俺は目はいいほうですし、あの鳥は羽を動かしたりしてて、はっきりしっかり鳥だってことはわかりました。でも俺くらい目がよくなくても、あの大きさならそれがわかりますよ。俺にわかったのは、どでかい鳥だし、変な動きをしてるし、目付きが悪くてやばそうだってことです」
「変な動き?」
俺が立ち上がると、おにいさん達はびくっとした。
俺は首をがくがく動かしたり、腕をぐにゃぐにゃさせたりした。エクシザの真似だ。
再現度は高いと思う。支配人がひえっと云って飛び退き、おじさんの腕に掴まっている。
俺はすとんとソファへ腰をおろし、肩をすくめた。
「こんな感じです。多分、怪我でもしてるんじゃないですか。動物って怪我してると凶暴になるっていうでしょ。それプラスあの大きさなんで、これはやばいなと思っておりてったんです」
ふたり組はあっけにとられたような表情で、同時にはあと云った。どうやら、俺が謎の怪鳥を危険だと思った理由については、納得してくれたようだ。
まあ全部嘘でもないけどな。実際、ホートリットは非常識に大きい鳥だし、かなり遠くだったのにはっきり見えた。それに、あんな動きしてたら幾ら鈍い俺でもやべえと思う。
それに、それが正しいのかはわからないが、なんとなくホートリットは夜間に動くイメージがあった。それが昼間からうろついている、ということも、俺にとっては結構な恐怖だったのだ。




