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雨はやまないし、ロビーのひと達もお部屋へ戻りはしない。淋しさとか不安が伝わってくる。お茶とお菓子が、それをうまくごまかせているのだと、信じたい。
しばらくすると、白石くんがやってきて、支配人室へお越しくださいと申し訳なげに云った。俺達の返事も待たず、先にたって歩き出す。俺と妹は顔を見合わせて、妹が肩を軽くすくめ、俺が苦笑してから、白石くんを追った。彼もお仕事なのだ。気を悪くするということはない。
廊下を通る間も、窓の向こうがけぶっているのが見える。これまで晴れが続いていた反動みたいに、雨はながびきそうだ。マルジャン達も、エクシザも、この雨で体調を崩さなきゃいいけど。
夏の雨は大粒で、冷たくはないけれどばたばたと体を叩いてくる。
支配人室に辿りつく。なかへ這入ると、白石くんがお辞儀して、外から扉を閉めた。
支配人室には、おじさん、支配人、それから雨に濡れた様子のおにいさんがふたり居た。雨に濡れたふたりはバスタオルを肩にかけ、タオルで頭を拭いている。
俺と妹はそのふたりへ軽く会釈して、おじさんへ近付いていった。おじさんは支配人のデスクによりかかって立っている。支配人は、憤懣やるかたない、という表情で、雨に濡れたふたりに乾いたタオルをさしだしていた。
おじさんはうっすら苦笑いして、俺達に軽く片手を上げた。
「わりいのお。また、来てもろうて」
「ううん」
ちらっとふたり組を見た。「あちらは?」
「ああ。警察のひとじゃ」
成程。
ふたり組は、この雨のなか、えっちらおっちら裏道をあがってきたそうだ。謎の怪鳥を見た俺や妹、支配人に話を聴くために。
支配人はふたり組のお世話をしながら、いらいらした様子で訴えている。「そこで、わたしは彼女達をつれて、下までおりていったんです。勿論一番下ではなく、鷹の巣のあとがあるところで……」
ふたり組は支配人の迫力に圧倒されつつも、おとなしく頷いていた。時折、質問をはさむ。
支配人が身振り手振りをまじえてホートリットのおそろしさを伝え、ふたり組はケータイとノートにそれをメモしている。おじさんが俺に耳打ちした。「どうする?」
「どうもこうもないよ」低声で返した。「使役とか魔物とか以外はほんとのこと云う」
おじさんは心配そうに頷く。
支配人が自分の気持ちを伝え終え、ふたり組から離れた。ふたり組はお互いのケータイとノートを見てなにやら言葉を交わし、ふんふん頷き、同時に俺と妹を見た。俺達の番が来たようだ。




