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幾ら魔物でも、散弾銃をまともにくらったら生きていられまい。エクシザの勘が鋭いこと、にげあしがはやいことに期待するしかない。遺骸が残ったら、よくない気がする。
放っておけばいいのは、そうなんだろうけれど、謎の生きものが居ることから別の世界の存在まであきらかになりやしないか、という不安があるのだ。論理の飛躍だけど、でもそういう突拍子もない発想をするひとが、絶対に居ないとは云えない。
そういうひとにとっては、謎の生きものの死体という強力な物証は、理屈を強化するものになる。まあ、変な病気が発生しないかとか、そういうのも気になるんだけど。
そもそも、ホートリットの情報を知るひとが増えれば増える程、分母が増えるのだから分子も増える。別世界からの侵入者説を、警察だとか、お役所の偉いひと達が考えついて、それに基づいて行動したら、なにかまずいことになる気がする。いろいろと。
渓谷からは湯気がたちのぼっているように見えた。雨が下のほうでは濃い霧のようになっているのだろう。猟友会のひと達は、この雨では捜索を諦めているだろうな。二次災害が起こりかねない。
どこかに隠れ場所をつくってあげられればいいのだけれど……収納空間に生きものをいれるのは、こわい。時間が停まってるっぽいから、身体に悪影響が出そうだもの。
ロビーにはまだ多くのひとが居る。そのひと達の気持ちはなんとなくわかった。
崖崩れが見付かった直後は、封鎖もされておらず、崩れていないところを通れたのだ。それが、いつの間にか警察がみちを封じ、通れなくなってしまった。
だから、タイミングを逃したくないのだろう。ここで待っていれば、「通っていいですよ」と云われた時、すぐに出発できる。雨だろうとなんだろうと、物理的に可能は可能なのだ。それに、荷物なら裏道からでも運んでもらえるのだから、気にする必要はない。
多分、半分くらいのひとは、そういう理由でここに居るのだろう。なかにはバックパックを大切そうに抱えて、ソファでうとうとしているひとも居た。
そういう目的でないひと達は、単に淋しいのだろうか。ひとり旅のひとも居る。ちょっとだけここに居るつもりで、これから数日間身動きとれないと云われたら、ケータイで家族や友人とやりとりできたとしても不安だろう。
俺と妹がロビーに居るのは、おじさんからそこで待つようにと云われたからだ。さっき、妹のケータイに電話があった。
多分、ホートリットのことについて訊かれるのだろう。誰に訊かれるかはともかくとして。




