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俺は苦笑いになる。妹が微笑んで頷いた。
「田舎ですから、土地がありますの。それで、個人でかわった動物や、大きな動物を飼っているひともいらっしゃいます。そういうところから逃げ出したのかもしれませんね」
ナラ夫妻は納得したみたいで、頷いた。ケンゴくんはチョコパフェの上にのったアイスをひと口で食べている。
妹の云ったことだって、まったくの嘘という訳ではない。都会と違って、ひろい土地を手にいれやすいから、実際、虎かなにかを飼っていたひとは過去に居るらしい。おじさんから聴いた覚えがある。
今も、数駅離れているけれど、個人宅でキリンを飼っているおうちがある筈だ。それもこれも、土地代が都会に比べてかからないからだろう。アナコンダだっけ? 大きな蛇を飼っているひと、あと大きなとかげやかわった猿を飼っているひとも居るらしい。
やっぱり、田舎だから土地代が都会よりも安くすみ、ひろくて快適な環境をペットに提供できるというのが、そういうかわった動物を飼いたいひと達にとっては魅力らしいのだ。環境を整えて、少しでも原産地に近いものにしてあげたいらしい。
でも、駝鳥って、個人で飼えるのかな。エミューとかならいけるんだろうか。
とにかく、ナラ夫妻も、スナガミ夫妻も、納得はしたらしい。話は、動物園やペットショップでも、悪質なところは動物に可哀相だというものにかわっていた。
「檻のなかへとじこめられて、さぞ気詰まりでしょうな!」
「我々がこんなに快適でも気が塞いでるんだから、動物達はもっとストレスがたまっているだろうねえ」
「逃げ出した鳥も、それで逃げたのかもしれないね、おじさま」
「動物の福祉というものが……」
食事を終えて、レストランを出た。俺と妹は、なんとなく窓に近付いて、外を見る。雨はまだまだ降っていて、やむ気配がない。「大丈夫なんかな」
「なにが?」
「あの子達。検査」
それで妹には通じたらしい。
「わからんけど、心配」
「ああ……」
ナラさん達もスナガミさん達も、「大きな鳥」を脅威とは捉えていない。直に見なかったひと達はそうだろう。
問題は、直に見ている支配人と四人の女の子、それに、写真を提供されている猟友会である。それからおそらく警察も。そちらにも、ホートリットの写真は当然渡っているだろう。
おじさんが秘匿しようとしたってできるものではない。支配人が見てしまっているのだし、支配人はホートリットに対して強い敵意を持ってしまっている。相当な恐怖を味わったみたいだから、その敵意は人間的には正しいのだろうけど。




