3478
俺と妹が続柄を説明すると、隣のテーブルの男女もくすくす笑った。「ごめんなさい……失礼でしたかしら」
「いえ、よく間違われますから、慣れてますわ」
「どうしてだろうな」
結構、頻繁なのだ。カップル認定されるの。
「俺達ってカップルに見えるのかなあ」
俺の素朴な疑問に、妹は肩をすくめる。「さあ。わかんないけど、一緒に居るからじゃないかな。あーくんと一緒に居たら、カップルだと思われたことある。あーくんはオカルトにしか興味ないんだけどね」
「でもそれって別に、きょうだいと思ったっていいだろ。そもそも俺達、結構似てるよな」
「うん。似てると思う」
「な」
「でもあれじゃない? 本当にカップルだった場合に、きょうだいですか? って訊いたら、気を悪くすると思ってるのかも」
「ああ、そっか。でも、似たもの夫婦って言葉もあるだろ。夫婦は似てくるって考えなら、きょうだいに間違われてもそんなに気を悪くしないんじゃないか」
俺達のくだらないやりとりに、お隣と、更にその隣のテーブルのひと達が、くすくすっと笑う。俺と妹は目を合わせ、ちょっと苦笑した。こうやって話が脱線していくのは、ふたりで居るとだらだら喋ってしまう俺達の特性だ。
俺は笑った目で、お隣のテーブルへ訊いた。「で、実際のところどうなんですか?」
「わたし達、どうしてカップルに見えるんでしょう」
妹ものっかる。お隣もその向こうも、くすくす笑いがとまらなくなってしまった。
お隣はナラさん、その向こうはスナガミさん一家。どちらも、この旅館目当てで旅行に来て、こんなことになってしまった。
ここへ来る前からの知り合いなのかと思ったけれど、ここに来てからたまたま知り合って、奥さん同士が同じ地域出身で意気投合したらしい。
「災難でしたね」
「そうでもありませんよ」
スナガミさんは、ちょっと距離があるのにはっきり聴こえる発声だ。「会社に電話したら、しばらく帰らんでいいとまで云われました」
冗談なのか本当なのか、判断しかねたが、スナガミ一家が笑ったので、笑うところなのだろう。ナラ一家も笑い、俺達兄妹も追随する。雰囲気がいい。
食事が運ばれてきた。食べながら、なんでもない世間話をする。崖崩れのことと、この大雨のことを喋るひとは居ない。
いや、一回だけナラ夫人が、こんな雨じゃあみちがもっと崩れてしまうかもねえ、と心配そうに云いながら窓の向こうを見たが、それには誰も返事をしなかった。みんな、目を逸らしていたいのだ。




