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 なんだか凄く見覚えのある光景だった。そう……御山(おんやま)でも、こういうことは数回あった。狂言遭難。還元過多による魔物の襲撃が数回。それに、トゥスミア先生の「事故」。

 みんな、神経が昂ぶっている。それをごまかすのには、あたたかい飲みものと睡眠しかない。崖崩れはともかく、俺達がどうあがいても雨はやんでくれない。

 勿論、魔王でもなければ、ホートリットをひとりで追い払うことは不可能だ。まあ、魔王であっても、相手が状態異常で勝手に弱ってくれてたからできたことだけどな。


 レストランは、ロビーとは正反対に、すいていた。つかわれているテーブルはふたつだけだ。小さな子どもふたりと、親と覚しい男女の四人組、六十代くらいの男女と十代後半くらいの男の子の三人組。

 テーブルはあいているのに、ふた組は隣り合うテーブルをつかっていた。知り合いなのかもしれない。食事を楽しみながら、お喋りしている。

 俺達もなんとなく、ふた組の近場のテーブルに陣取った。窓辺で、窓がらすの外側を、雨水が滝のように流れているのが見える。マルジャン達、それにエクシザは、大丈夫だろうか。

 俺にとってさいわいなことに、稲光はない。ただただ、雨が降っている。


「こんばんは」

 隣のテーブルの、六十代くらいの男性から声をかけられた。俺と妹は窓に向けていた顔をそちらへ向けて、にこっとして頭を下げる。「こんばんは」

「雨、凄いですね」

 妹が如才なく云う。俺達に話しかけた男性は、にっこりして頷く。隣の、同じくらいの年代の女性もだ。向かいに座っている十代の男の子は、とりの解体に夢中になっている。

 ウェイターさんが来て、俺はハンバーグの定食と、トマトヨーグルト、スイカのシャーベットを注文した。妹はとりとキャベツの甘酢あん定食、枝豆豆腐、桃、フローズンヨーグルト。

 注文を繰り返して、ウェイターさんが去っていく。待ちかまえていたみたいに、隣のテーブルから声がする。

「観光でいらしたんですか?」

 女性のほうだ。俺は微笑みで応じる。「いえ、少し、ゆっくりすごそうかと思って」

 息をするように嘘を吐いたが、自然だったのか、怪しまれた様子はない。男性も女性もにこにこして頷いている。

「ああ、いいですね。ここは温泉が素晴らしいからなあ」

「ええ、本当に」

「ご夫婦かしら?」

 女性のほうが云い、俺と妹はくすくす笑った。ふたりで居ると、よくカップルに間違われるのだが、ご夫婦、というのははじめてだ。


感想ありがとうございます。はげみになります。

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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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